転職は、自らコントロールしにくいハイリスクな「手段」である
前回は、さまざまなマーケターの職域を見た上で、何に「なりたい」かではなく、何を「やりたい」かという、自らの仕事の中身に目を向ける重要性について触れました。自分が貢献したい、または体験したい業務がはっきりすれば、それを実現するために今の自分に何が不足しているのか、獲得すべき知識や経験などが自ずと明確に捉えられるようになってきます。
そして目的がはっきりすると、その達成手段として新しいことに挑戦したくなったり、違う環境に目を向けるようになるのは自然なことです。RPGでいえば、「僕は戦士になるんだ!」と決意して村を飛び出し、いよいよ旅立ち……といったところでしょうか。キャリア形成という観点からは「いよいよ転職ノウハウですね!」という読者の皆さんからの声が聞こえてきそうです。
しかし、ここで筆者の経験からお伝えしたいのは、転職を考える前に、まずは足元を見つめ直して「今できることにフォーカスする」ことで得られるメリットについてです。

また、外部環境を変化させることは自らの意思だけでは実現できず、自分がコントロールできることに限りがあります。要するに時間や手間、運、タイミングなど何かに依存しないと達成できない、リスクを伴う手段なのです。
今回は、転職という外部環境の変化に依存する前に、マーケターがやるべき2つのことを紹介したいと思います。 その2つとは、「目の前の課題に集中すること」と「外部知識を取り入れること」です。
「目の前の課題に集中すること」は、当たり前のようで非常に重要だ
まず、「目の前の課題に集中すること」 について。筆者自身は、未知のものや不確定なことが大好物(これは後に出てくるマインドセットにつながります)なので、この種の手段に飛びつきやすいことが逆に問題なのですが、新卒で社会人になって最初の配属から最初の転職までは、数年かけて目の前の課題に集中したことで、その後に役立つスキルセットを獲得できたという経験があります。

この業務は一見、マーケティングとはつながりがなさそうに見えます。しかし、将来の仕事として「メーカーやブランドのマーケティング」に携わる上で、モノがどのようにつくられて運ばれるか、つまり営業や生産の現場、そして物流という「仕事の流れの基本」を理解していることはとても大事に思えました。
また、「複数の部署をつなぐ役割」という意味でも、コミュニケーションのハブとして社内をつなぐというマーケティングの役割の一部を理解・経験することは、非常に役に立ったと考えています。
加えて、社内情報システムとは言え、ITの部署で要件定義から開発、システムベンダーとのやりとり、プロジェクトマネジメントに携わることができたのも、なかなか得がたい経験だったと思うのです(現在では、デジタルマーケティングに限らず誰にとっても、この大枠の知識はマストと言えるでしょう)。