現実世界との壁を超え、送客効果の高いVTuberの特性
我々が持つ自社スタジオは、モーションキャプチャーだけではなく、音楽収録やテレビ放送などもできる施設になっています。モーションキャプチャースタジオ兼テレビ局スタジオのようなもので、日本テレビの音楽特番「THE MUSIC DAY」に星街すいせいが出演させていただいたときのように、生中継する形で出演できるような環境が整っています。
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連載の第1回でお伝えした通り、VTuberはタレントであり、キャラクターIPでもあるという特性をもっています。そのため、企業とのコラボレーションを比較的行いやすいという側面があります。最近ではスマホゲームの「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」などとコラボレーションさせていただきました。
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その他、VTuberとしての特性を活かしたこととして、複合商業施設の渋谷ヒカリエのサイネージ広告があります。デジタルサイネージ上でVTuberタレントが実際に動くコンテンツを流すことで、消費者の目を引きつけています。このようにVTuberはデジタルコンテンツと融合することの汎用性が高いです。
また、行政との取り組みでは2023年に東京観光大使に任命された「森カリオペ」さんは、英語も日本語も話せる歌手でユニバーサルミュージックにも所属しています。集英社の少年マンガ『ONE PIECE』とタイアップし、単行本106巻の公式テーマソング「未来島 ~Future Island~」を制作しました。このPVはYouTubeで公開され、2023年12月1日時点で累計1100万再生を記録しています。
ファンが中心となってファンアートを描いて拡散したり、タレントが配信した動画に多言語で字幕を付けたりすることが多くあります。ライブ配信中にもファンがチャットで同時通訳し、X(旧Twitter)でもタレントがポストしたものをファンがリプライで翻訳するという現象が起きています。
このようにVTuberには、タレントが提供するコンテンツが世界中に広がっていく手段がたくさんあります。タレント、キャラクターIP、コンテンツなどを通して多くの人を惹きつけ、購買行動を起こし、それをさらに自らのXで拡散させるという強みがあります。そのためVTuberは、マーケターやプランナーがタレントをアサインするときの重要な基準のひとつである送客効果についても優位性があると考えています。
最近では、小学生でもYouTube を通じてVTuberのコンテンツを楽しんでいます。今の小学生から大学生にとってはYouTubeが、私の世代でのテレビと同じような存在になっているのだと思います。
実際に商業施設とコラボレーションすると、若年層を中心に来場者が増えます。東京ドームシティでは、従来のメイン顧客層であった25~35歳のアニメやゲーム好きの層に加えて、VTuberの起用が起因となり15~25歳の若い世代も増えています。特に、当社の所属タレントである「星街すいせい」が起用されている専門学校HALのテレビCMソング「レクイエム」は、若年層にも人気があるボカロP「kanaria」のオリジナル楽曲です。
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