企業におけるマーケティングの役割と重要性が増す一方、「マーケターの仕事はAIに奪われるのでは」とも囁かれる昨今。そんな変革期にマーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
次世代を担う「ライジングスター」にフォーカスし、彼らの多彩な思考や行動を探ることでマーケティングの近未来を照射するAGENDA Note.の本連載。33回目となる今回は、G7伊勢志摩サミットの会場となったことでも知られる志摩観光ホテル(三重県)のホテリアーとしてキャリアをスタートし、現在は近鉄・都ホテルズの営業企画部でブランディングに携わる田中智穂子氏。インバウンド需要が拡大し、旅館・ホテル市場も激戦化する中、「世界的なホテルブランド」を目指す田中氏の奮闘を聞いた。
次世代を担う「ライジングスター」にフォーカスし、彼らの多彩な思考や行動を探ることでマーケティングの近未来を照射するAGENDA Note.の本連載。33回目となる今回は、G7伊勢志摩サミットの会場となったことでも知られる志摩観光ホテル(三重県)のホテリアーとしてキャリアをスタートし、現在は近鉄・都ホテルズの営業企画部でブランディングに携わる田中智穂子氏。インバウンド需要が拡大し、旅館・ホテル市場も激戦化する中、「世界的なホテルブランド」を目指す田中氏の奮闘を聞いた。
コロナ禍のグループワークが転機に
―― 田中さんは2019年に新卒で近鉄・都ホテルズに入社し、2016年のG7伊勢志摩サミットのメイン会場となったホテルのレストランでキャリアを開始されたと伺っています。どんな経緯で、現在の近鉄・都ホテルズ 営業企画部に配属されたのですか。
就職活動では、小学生の頃から学んだ英語を生かせる仕事に就きたいと思っていました。大学のグローバル・コミュニケーション学部で観光を学び、また接客のアルバイトもしていたことから、「お客さまの旅先での思い出を彩りたい」「お客さまの心に残るような体験を提供したい」という思いで、ホテル業界を志望しました。
当社を選んだのは、創業130年余りの歴史を持つホテルであることや、海外を含めて25施設ものさまざまなカテゴリーのホテルを展開していること、将来的にこれらのホテルのマネジメントに携われる可能性があったからです。
近鉄・都ホテルズ 業務推進室 営業企画部
田中 智穂子 氏
総合職として入社し、まずは現場でいろいろな経験を積むため、「志摩観光ホテル ザ ベイスイート」にあるフレンチレストラン「ラ・メール」に配属されました。G7サミットでワーキングディナーを担当した総料理長の樋口宏江が率いる一つ星レストランで、テーブルの準備やお料理・ドリンクの提供などの仕事を1年ほど続け、2020年にホテル内の営業企画部に異動しました。
田中 智穂子 氏
総合職として入社し、まずは現場でいろいろな経験を積むため、「志摩観光ホテル ザ ベイスイート」にあるフレンチレストラン「ラ・メール」に配属されました。G7サミットでワーキングディナーを担当した総料理長の樋口宏江が率いる一つ星レストランで、テーブルの準備やお料理・ドリンクの提供などの仕事を1年ほど続け、2020年にホテル内の営業企画部に異動しました。
―― 2020年と言えばコロナ禍が本格化した年ですね。何か転機があったのでしょうか。
コロナ禍でホテルが1ヵ月ほど休業している間、お客さまのいない館内の維持業務をしながら、レストラン・バーなどを担当する料飲部のメンバーでグループワークをすることになりました。私のグループは「アフタヌーンティー」がテーマだったので、国内のさまざまな地域で提供されるティースタンドや紅茶の種類、季節ごとのメニューなどを調べ、志摩観光ホテルにふさわしい内容や売上目標、戦略などを提案したのですが、営業企画部への異動は、その際の発表がきっかけだったと後で聞きました。大学時代に毎週のようにプレゼンテーションをする機会があったので、発表の仕方が特徴的だったのかもしれません。
そこで5年ほどホテルのホームページ編集やイベント・アクティビティ運営、印刷物・販促物の校正・制作などに携わり、2025年7月からは大阪にある近鉄・都ホテルズ本部の業務推進室 営業企画部にて、プレスリリース発信やホームページ運営など広報・宣伝業務を中心に担当しています。志摩観光ホテルには6年余りいたことになります。
―― ひとつのホテルに長くいて、いきなり本部というキャリアは珍しいのではありませんか。
総合職の先輩では、複数のホテルを経験した後に本配属になられた方が多いようです。志摩観光ホテルはフラグシップホテルのひとつなので、ここで長く勤めた経験を、本部で共有しながら他のホテルのブランディングなどにも生かしてほしいという意図があったのではないかと考えています。
―― 印象に残っている仕事や出来事はありますか?
志摩観光ホテルでの6年は、やはり強く印象に残っています。1年目、「ラ・メール」でサービスをしていたときに、お客さまから普段は行わないサービスのご要望をいただき、なんとか叶えて差し上げたいと、厨房のスタッフにお願いして対応したことがあります。お客さまはお喜びくださっただけでなく、翌日のチェックアウトの際に私の名前を出して褒めてくださったと後で聞きました。たぶん、名札で名前を覚えてくださったと思いますが、新人社員としてはとても嬉しい出来事でした。ホテルの営業企画部に異動してからも、イベントの司会を務めた際にお客さまから「よかったよ」などと言っていただけると、励みになりました。
2023年には志摩観光ホテルでG7の交通大臣会合が開かれ、EUの要人のお客さまをお出迎えし、お部屋までご案内する役割をいただきました。2016年のG7サミットや、皇室の方々がご利用くださった実績があったからこそ志摩観光ホテルを選んでいただいたと思いますが、私自身は国際的なイベントに携わるのは初めてで、とても緊張したことを覚えています。無事にご案内でき、光栄な経験をさせていただきました。
また、2024年のクリスマスにホテルの人気メニューであるアフタヌーンティーのプレスリリースを作成した際は、その年のアフタヌーンティーの魅力を伝えるにはどのようなレイアウトにし、どんな表現が適切か、上司からもたくさん指摘をいただきながら試行錯誤しました。結果として、平均400PVで1000PVを獲得できれば良いとされるなかで1700PV以上を獲得でき、その月に配信したプレスリリースでは1位になりました。社内の士気も高まり、とても嬉しかった記憶として印象に残っています。




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