都市と地方にそれぞれ拠点を持ち、自由に行き来して生活する「2拠点居住」や「多拠点居住」への関心が高まる中、自分でもなんらか実践してみようと、今年の8月はひと月まるごと北海道・美瑛町にプチ移住することにしました。個人的には「1.5拠点居住」といったイメージです。

 8月1日(金)に北海道・美瑛町にやって来て、その実践報告を、前編・中編・後編の3回にわたってお伝えしています。今回はいよいよ後編(最終回)です。8月31日(日)に美瑛町を離れて、近隣の都会生活も体験してみようと旭川市に1週間滞在。この原稿を書いているのは、帰京翌日の9月7日(日)です。
 

国も後押しする「1.5拠点居住」


 美瑛町での「1.5拠点居住」の実践は、とても善きものを自分にもたらしてくれました。8月1日(土)に美瑛町に来て以来、自分としては「番外編:旭川滞在」と名付けた1週間も含めて、満足のいく5週間でした。何に満足したかを一言で言うと、“快適に仕事を完遂できた”ということだと思います。
  
美瑛町は“丘の町”とも呼ばれている。こちらは“親子の木”。

 さて、前編でも少し触れましたが、「1.5拠点居住」も含むと思われる「二地域居住促進法」が昨年2024年11月に施行されました。
 
参考:「二地域居住について」(国土交通省国土政策局地方政策課)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000990601.pdf

 そこには、「二地域居住とは、主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点(ホテル等も含む。)を設ける暮らし方」と記されていて、ニュアンスとして、ここで僕が語っている「1.5拠点居住」に近いものがあると感じています。

 また、そのメリットを下記の通り4つ挙げています(役所っぽい言い回しで分かりにくいところがあるので佐藤達郎流にアレンジしました)。

1.地方活性化
2.都市の国際競争力UP
3.個人にとってのより良いライフスタイルの実現
4.災害時の対応力UP


 3で掲げられている「個人的意義」が、今回の連載の主なテーマですね。国がこうして本格的に動き出し、様々な活動に補助金も出ていることは、我々の「1.5拠点居住」にとっても後押しになりそうです。
  
観光地としてかなり有名な“青い池”。観光客多し。
 

プチ移住の「こうするべし」


 さて、5週間におよぶ北海道(美瑛町+旭川)プチ移住は結果的に、当初予定していた仕事も全部やり切ったし、気分的にも楽しかったし、大満足でした。
  
美瑛駅にいちばん近い踏切は、人と自転車しか通れない。

 その経験を元に、「こうするべし」と「これはやめておくべし」について、いくつか記してみましょう。まずは、「こうするべし」を3点。

①その期間のテーマを具体的にハッキリさせること。
 ふだんの日常生活ではなかなか手が回らないテーマが良いと思います。例えば、英会話のスキルを上げるとか、AI活用に習熟するとか、あるいは10年後の自分の働き方をしっかりと考えるとか、“やっておきたいのだけれど普段は手が出ないこと”ってけっこうあると思うのですよね。

 もちろん多くの皆さんは、リモートでのルーティーンワークにも対応しながらだと思うのですが、それでも、こうした特別な場所での特別な時間だからこそ、実行しやすいと思います。
 

美瑛の大空アート(僕がそう呼んでいる)は、曇り空でも迫力が。

②宅配便やECサイトを縦横に活用する。
 ひと月って長いです。その間に、仕事に関連するテーマに取り組もうとすると、資料も大量になることが予想されます。これを自分の移動に合わせて持って行くのは難しい。だから今回の僕の場合も、参考図書や資料などを中型のスーツケースに詰め込んで、あらかじめ滞在先に送っておきました。

 また、いつものサプリやふだん楽しんでいるお気に入りの飲料など、最初に持って行った分では足りなくなるかもしれないし、飲料等をスーパーへしょっちゅう買い出しに行くのも手間がかかります。Amasonや楽天等のECサイトは、届け先が選べるので、そこに滞在先を入力すれば、問題なく届きます。これらの活用は、お勧めですね。

③滞在先ならではの生活も楽しむ。 
 ①とのバランスにはなりますが、滞在先で知り合った人と飲みに行ったり、近所のレストランにランチに行ったり、観光地を訪れてみたりと、そこでしかできない経験を楽しんだほうが良いと思います。

 僕は今回、大量の仕事(おそらく東京で取り組んでいたら気分的に挫けそうになってしまいそうな大量具合)を持って行ったのですが、③の要素を適宜入れ込むことで、仕事に充てている時間帯は集中して取り組むことができ、完遂できました。
 

普通にスーパーで買える“美瑛牛乳”。なかなかに美味。
 

さすが北海道。イクラが、ほぼ食べ放題状態。