目指すは「世界一面白いダイレクトマーケティング」


――企業直営の通販サイトで「世界一面白いダイレクトマーケティング」を掲げる真意は何でしょうか。

 大手企業のグループ会社ではありますが、中身は完全にスタートアップやベンチャーのような気質です。何のハードルも設けず、「やった方が良いと思ったことには、すべて取り組む」というスタンスを徹底する意味で、「世界一面白いことをやろう」と表現しました。

 立ち上がったばかりの会社ですが、すでにさまざまなことにチャレンジしています。商品やサービスの開発だけでなく、新たな販売チャネルの開拓や、売上と利益につながりそうな新規業務の請負、グループ会社内の顧客発掘にも取り組んでいます。さらに、「カップヌードル」のメーカーだからできる災害復興支援、景品やノベルティ販売なども行っています。思考のハードルを設けないという意味で「面白い」という言葉を使っていますが、一つひとつは、とてもまじめに考えています(笑)。

 そのほかにも、「お酒や油が贈答品になるのだから、カップヌードルも贈答品になるはずだ」と考え、花束のようにデコレーションした「ヌードルブーケ」をつくってみました。
  
出典:日清食品日清食品グループ オンラインストア

―― 「面白ければ何でもやる」というのは、理想論にも聞こえますが、本当ですか?

 これは日清食品に長く受け継がれている企業文化だと思います。私自身、この会社に転職してきて、提案の自由度の高さに驚きました。たとえば、頭髪にアプローチする乳酸菌を配合した「スカルプリッチプロフェッショナル」など、「なぜこれを日清食品が?」と思われるような商品でも、お客さまにとって本当に良いものであれば迷わず販売します。「自由にアイデアを出す」「面白いものが正しく評価される」という風土を醸成しないと、どうしても費用対効果が予測できることしか考えなくなります。そればかりでは、非連続な成長は生まれません。ポンっと何かが生まれる、そんな土壌であり続けることを意識しています。

 アイデアの足がかりになるのが、お客さまとの接点です。自宅のテレビ、パソコン、スマホ、SNS、郵送物、カタログの同封物、さらには外出先のあらゆる場所や施設まで。テレビであれば、インフォマーシャルやテレビショッピングも視野に入ります。お客さまが接するすべてを「売場」と捉え、それぞれの接点でどんな商品を訴求できるのか、まだ開拓していないチャネルはないかを、聖域なく考えていく。こうした積み重ねが、結果として面白いアイデアも生み出していくことにつながるのだと思います。

―― 「特定の商品に頼らない」という方針と関連しますが、EC業界では近年、単品通販の厳しさが増し、複数商品を購入してもらうことでLTVを伸ばす戦略にシフトしている傾向がうかがえます。貴社においてはいかがですか?

 そうですね。確かに、複数の商品を購入されるお客さまのLTVは高くなる傾向があります。当社の場合、日清食品の全商品を扱っていますので、たとえば健康食品と一緒に「日清ラ王」を購入するといった、多彩な商品の組み合わせが可能です。また、メーカー直販の特徴として、一般流通向けには出荷期限を超えてしまった商品も、直接配送なら問題なくお届けできる場合があります。そうした商品を、ケース単位でお得に販売するセールも非常に人気が高く、結果的に顧客単価を高める要因になっています。

―― 日清食品は面白いCMをほとんど内製する(関連記事:日清食品の宣伝部長が明かす、おもしろいテレビCMをつくり続けるための「脳のスイッチ」【日清食品ホールディングス 宣伝部長 米山慎一郎氏】)ことで知られますが、ECサイトのクリエイティブや、貴社の公式サイトもかなりインパクトがあります。どんなコミュニケーションを意識していますか?

 当社は日清食品の中で育ってきた事業が独立し、法人化した会社です。そのため、日清食品らしいユニークなマーケティングを受け継ぎ、私たちも同じ姿勢で追求しています。日清食品のCMは、出稿量に対する印象の残り方が他のメーカーより強いと評価されていますが、それは1本のCMやひとつのコンテンツにかける意識が、全社的に高いことの表れです。DtoCでも、メールマガジン用のバナーひとつにテレビCMと同じくらいの訴求力が求められるので、デザインやコピーは社内で考え抜いています。

 その結果、情報がぎっしり詰まった濃密なバナーになることも多いですが、色々な要素を詰め込むのではなく、メインコピーをドーンと載せてメッセージを一目で伝えるなど、演出方法にもこだわっています。

―― 組織体制についても教えてください。

 (取材当時)スタッフ25人のうち8人が入社1年以内のキャリア社員です。通販事業者、デジタル広告代理店、倉庫業者、システム会社など、バックグラウンドは多様ですが、「まずやってみよう」という当社の企業文化にフィットする点は共通しています。

 私自身がリーダーとして心がけているのは、相談の心理的ハードルをゼロにすることです。資料にまとめて理論立てて提案するよりも、「これどう思いますか?」とラフに相談できる雰囲気をつくるようにしています。もちろん、内容が良ければ、そのまま仕込みに入っていきます。

 ただ、一部署の部長だった頃と違い、業務に割ける時間の配分が大きく変わってきました。そのため、組織がフラットかつ有機的に動けるよう、今後はさらに工夫が必要だと感じています。

――最後になりますが、佐藤さんがビジネスパーソンとして大切にしていることを教えてください。

 アイデアが湯水のように湧いてくるわけではありませんし、数字を見て落ち込むこともあります。ですが、短期的な悩みにとらわれるより、長期的な視点を意識しています。今踏ん張る意味が、その先にどうつながるのか。管理職には「無理かもと思ったら、目標は絶対に達成できない」と常々言っています。「新しいことや面白いことをやる」という企業文化を武器に、諦めずに挑戦し続けたいです。