何度も読み返している名著、製造業だけがテーマではない
最近、「マーケティング」と「事業」は、同義語ではないかと考えている。そう考えるきっかけを与えてくれたのがゴールドラット博士が執筆した書籍『ザ・ゴール』だ。2000年に邦訳が出て以来、そのシリーズを含めて何度も読み返している。連載第3回でも、『ザ・ゴール』の考えの基になった「トヨタ生産方式」について触れた。
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主人公のアレックスは、改善策を模索する中で、大学時代の恩師であるジョナに偶然出会い、いくつかの問いを出される。そのやり取りを要約すると、次のようになる。
「工場にロボットを導入して生産性は上がったのか?」「売上は上がったのか?」「在庫は増えたのか、それとも減ったのか?」
「生産性は目標(ゴール)に向かって会社を近づける行為そのものだ。そのためにスループット、在庫、業務費用の3つの指標を見なければならない」
この本では、主に工場内の生産性について語られているため、TOCは主に製造業の話だと思われているが、ゴールドラット博士は、繰り返し「TOCがもっとも成果を出すのは、小売業のはずだ」と語っていた。
私自身、博士が存命中に来日した機会に直接、教えを受けることができた。やはり博士は、製造業よりもマーケティングや働き方、組織の在り方など企業全体、そして社会とのつながりからの視点で語られることが多かった。