ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #02

世界最大手食品スーパーKrogerが、Microsoftと組んで始めた最新アプリ・デジタルサイネージを体験

前回の記事:
商品が並んでいるのに、買って帰れない「GU」の新業態を体験してみた【郡司 昇】
 2月中旬に米国・シアトルとサンフランシスコにおけるリテール最先端の取り組みを体験してきました。これから数回にわたって、テクノロジーを活用した米国店舗の紹介と体験レポートをお届けします。  
 

No.1食品スーパーチェーン「クローガー(Kroger)」

 食品スーパー中心の小売業として、世界最大の売上高を誇る「クローガー(Kroger)」。世界の小売業売上ランキングでも3位(2016年時点)の超大企業です。ちなみに世界の小売業上位10社は、次の通りです。
 

<世界の小売業売上ランキング>

1. 米Wal-Mart Inc.
4,858億ドル(2018年5,003億ドル)
2. 米Costco Wholesale Corporation
1,187億ドル (2017年1,290億ドル)
3. 米The Kroger Co.
1,153億ドル(2017年1,227億ドル)
4. 独 Schwarz Group
992億ドル ※2016年推定値
5. 米 Walgreens Boots Alliance,Inc.
970億ドル(2018年 1,315億ドル)
6. 米 Amazon.com,Inc.
946億ドル(2018年 1,778億ドル)
7. 米 The Home Depot,Inc.
945億ドル(2017年 1,009億ドル)
8. 独 Aldi Group
849億ドル
9. 仏 Carrefour S.A.
841億ドル(2018年 849億ドル)
10. 米 CVS Health Corporation
811億ドル(小売のみの数字。薬局含めた2016年連結1,775億ドル2017年同1,847億ドル)
※2016年度結果Deloitte Touche Tohmatsu Limite調べ + 筆者による各社IR情報調査結果

 Amazonの成長を考慮すると、直近では1位がウォルマート(Wal-Mart)、2位がアマゾン(Amazon)、3~5位をコストコ(Costco)、クローガー(Kroger)、ウォルグリーン(Walgreens)で競っていると考えられます。

 ウォルグリーンの急成長は、米ドラッグストア大手ライト・エイド(Rite Aid)から1932店舗を買収したためです。なお、食品スーパーのアルバートソンズ(Albertsons)がライト・エイドを買収すると公表していましたが、2018年8月に破談となっています。

 クローガーの特徴的な点は、アメリカのみで事業展開していることです(ウォルマートは29カ国、アマゾンは14カ国)。

 このクローガーがマイクロソフトと提携して、新しい取組みであるデジタルサイネージシェルフ「EDGE」を1月に始めましたので、早速体験してきました。まずは前編で「EDGE」と、連動するアプリ「Scan,Bag,Go」の概要をご紹介します。

■デジタルサイネージシェルフ「EDGE」概要
※写真はいずれも筆者撮影
 EDGEは一言でいうと、「デジタルサイネージ機能を持った陳列棚」です。目に見える部分を一言で表すと「デジタルサイネージ型プライスレール」でしょうか。

 小売業に詳しくない方向けに補足すると、商品名と価格が記された値札を「プライスカード」といい、商品特性やセール情報などを盛り込んだ一回り大きな値札を「POP(Point of sales:販売時点広告)」と言います。それらを差し込む機能を持ちつつ、商品の倒れ止め機能を兼ね備えたものが「プライスレール」です。通常は透明なプラスチックでできていますが、EDGEではこれがデジタルサイネージになっているというわけです。

 このシェルフには、店員の陳列補助、セールなどでの価格変更など、オペレーション効率化の機能もあります。日本でも時々見かける電子プライスカードは、店員の価格変更に伴う作業を減らすものです。

 ここでは、顧客体験に絞って紹介していきます。電子プライスカードは日本でも見かけますし、デジタルサイネージでの商品訴求も珍しくはないものです。EDGEの今までにない画期的な機能は顧客が買い物リストに入れた商品の場所を売場に顧客が近づいた時に表示するというものです。

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