関西発・地方創生とマーケティング #11
交通の革命児 WILLERが実践する、お客さまの声を集める「仕組みづくり」
2019/03/13
データとマーケティングの関係
データを活用して、マーケティングに活かす。最近の「DMO(Destination Management /Marketing Organization:観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域づくりを行う法人のこと)」は、そういう風潮にあるようです。しかし、村瀨さんは「集めたデータを本当に有効活用できるのか。膨大なデータを集めた調査結果を見て考える前に、理想のサービスを提供するには、どのようなデータが必要か考えることから始める必要がある」と語ります。
つまり、ターゲットを絞って、その人たちの課題を解決するためのデータを集めるのです。例えば、20歳だったお客さまも10年後に30歳になると、求めるものが違ってきます。学生時代のように時間は無いけれど、多少お金に余裕が出てくるため質を求めるようになるのです。
「顧客の声から、サービスを考えるのが大事。そして価値基準(レベル)を決めて、それを定量的に評価して改善する仕組みを整えることが大事だ」と主張します。例えば、清掃、接客、安全運転などカテゴリー毎に目標を達成するための努力を繰り返すのです。カテゴリーごとに数字で明確化されると、組織内で横並びの意識が出て、各カテゴリーが目標を達成していくそうです。
ここで気になったのは「乗務員の接客」についてです。ひと昔前まで、一般的にバス乗務員の中には「乗せてやっている」という意識の人がいたのも事実。そういった人たちの意識をWILLERは、どのように変えたのでしょうか。
「バス乗務員の経験のない人を採用した」そうです。宅配便のサービスドライバーを採用して、まずベースとなる文化をつくる。ゆるい雰囲気の会社にはゆるい人が集まり、そうすると良い乗務員は辞めていきます。逆に厳しい会社では、やる気のない人が辞めて、やる気のある人だけが残ると。
移動には「やさしい」が欠けている
「easy」「kind」「friendly」など、英語には色んな「やさしい」があります。自分たちのターゲットにとって、どのように「やさしい」のか、競合ではなくお客さまの声に耳を傾けて、バスのシートの仕様を決めていくそうです。しかし、特別仕様のバスを1台用意するのには、数千万円がかかります。投資しても、需要がなければビジネスとして成立しません。その見極めは、どうされているのかと尋ねると、「会員を持つ強みを生かしている」と答えられました。
会員に対して、こういうシートのバスをつくると利用するかどうか聞く。すると声が届く。そして会員がどれだけ動くと、新規がどれだけ動くかは経験値で予測できる。そして何台必要で値付けをどうするか、見込みがつくそうです。
社員だけが考えるより、旅行の幹事のようにお客さま、そしてさらにパートナーも一緒に皆で考えることが大事で、このメンバーをWILLERS(ウィラーズ)と呼んでいらっしゃるそうです。