関西発・地方創生とマーケティング #12
マーケターのキャリアは「転職」か「転社」か【近鉄都ホテルズ 能川一太】
マーケターの「キャリア」について考える
春。就活、新社会人、何かとキャリアが話題になる季節です。
以前、「近大のコミュニケーション戦略」について書いた記事に登場した私の娘も就活、真っ最中。
今後のキャリアについて考えながら、エントリーシートと格闘している娘からの相談に付き合っていると、ふと自分は、どうだったのだろうか。一度、振り返って考えてみようという気になりました。
私の経験に再現性があるかどうかは分かりませんが、これからビジネスの世界でキャリアを積んでいく方の何かの参考になれば幸いです。
私が勤務する近鉄(近畿日本鉄道)という会社は、離職率が低く、私の同期で辞めたのは1割、それも初めて辞めた人が出たのは入社してから10年ほど経ってからのことです。そんな会社ですので、いわゆる転職組もおらず、これまで「古き良き?」環境に身を置いていました。
そんな中、数年前に初めて合宿型のマーケティングカンファレンスに参加した時、いくつかの衝撃を受けました。そのうちの一つは、参加者の全員ではないかと思うくらいに転職経験者が多かったことです。
そのとき私は、自分よりも随分と若い人が既にいくつもの企業で経験を積んでいることに対して、何となく引け目を感じたものです。
でも最近は、少し考え方が変わってきました。
いわゆるマーケターと言われる人たちは、「マーケティング」というスキルを使って、さまざまな企業を渡り歩いています。一方で私の場合は、一つの企業グループに属しながら、多種多様な職業を経験してきました。具体的には、建築、プロモーションといった職種だけでなく、鉄道からレジャー(志摩スペイン村で支配人)、そして現在はホテル事業など業界も変わっています。
そう、実は「転職(職を転じる)」しているのは私の方で、一貫してマーケティングというスキルを武器に企業を渡り歩いているマーケターは、正しくは「転社(会社を転じる)」ではないのか、と。
先日、そんな話をある方としました。その方は、社会人のスタートは日本企業でしたが、その後に複数の外国企業に転職(転社)されます。ちょうど私が志摩スペイン村で働いていたタイミングにご家族で遊びに来られましたが、そのときはアップルに所属されており、次のようにお話されたことがずっと心に残っていました。
「いつか日本のレガシーな企業で、日本のために仕事をしたい」
そして現在は、日本の商社で今までのキャリアを活かしてデジタルメディアの仕事をしていらっしゃいます。有言実行で、なんだか嬉しく思いました。
また、飲み会のときの会話ですが、こんな話もあります。
自身の意思で転職(転社)したことがないAさんいわく「新たな環境で成果が出せなかったらどうしようか、常に不安ですよ。Bさんは、自分のスキルで色んな企業を渡り歩いて凄いと思う」と。
これに対してBさんは、「私はずっと同じ環境に身を置くということができなくて。なので、ひとつの企業に長くいられること自体、私からすれば尊敬に値しますよ」
この会話を聞いていたプロ経営者のCさんは、「転職と離婚は似ているんですよ。一度、経験すると後は抵抗が無くなりますから」と。
結局、転職経験の有無で「どちらかが偉い」という話ではなく、自分に合っているのは、どちらなのか、そして自分はどうしたいのかという意思が大切なのでしょう。