ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #06
Amazonに負けない、年商12兆円 世界最大ホームセンター「ホーム・デポ」が新規出店よりもデジタルに投資する理由
無人店舗、AI(人工知能)、モバイル決済…新たなテクノロジーが次々とリテール領域に導入されはじめています。また、大手リテール企業の倒産や、ネット企業による店舗チェーン買収も注目を集めています。本コラムでは、そうした国内外のニュースから可能なものは自ら体験しつつ、今後のリテールのあるべき姿と未来像を紹介していきます。今回は、世界最大のホームセンター「ホーム・デポ(Home depot)」におけるアプリを使った買物体験です。
日本のホームセンター市場を3倍にした規模
ホーム・デポ(Home depot)は、2018年末 現在2287店舗(うち1981店舗が米国内)を展開する年商12兆円(IR情報を1$111円で換算)を超える世界最大のホームセンターです。平均3000坪の巨大ホームセンターで1店舗当たりの年商は52.5億円に上ります。ちなみに日本のホームセンター市場は約4兆円で平均1100坪、1店舗あたり年商8.38億円ですので、坪当たり売上高も2倍以上あることになります(日本DIY協会の公表数値から計算)。
ここまで読むと「規模を活かして低価格販売をしているのだろう」と考えた方が多いかもしれませんが、不正解です。
ホーム・デポの粗利益率は約34%、日本のホームセンターは平均32.7%ですので、粗利益率に大差はありません。小売業は一般的に経常利益率もしくは純利益率で5%を超えれば優良経営と言われていますが、ホーム・デポの2019年1月期は純利益率10.27%でした。
ずっと順調だったのかというと、そうではありません。以前は年間150店舗前後の出店で業績を伸ばしていたものの、既存店が低迷した2008年には純利益率が3.17%まで低迷していました。
売上高が最も低迷した2009年以降の業績とアメリカの店舗数(国外に約300店舗あります)をグラフにしてみました。
店舗数がほとんど変わらずに売上が上昇していることが明確です。比較として、日本のホームセンターを同じ形式(縦軸の目盛りは違います)でグラフにしてみました。
こちらも一目瞭然で、市場規模が変わらない中、店舗数が増えているということがわかります。1店舗当たりの売上高が2009年の9.5億円から2017年の8.38億円に低下しています。
これは商圏が狭くなることに対応し、小型店を増やしているということでもあります。しかしながら、1店舗当たりの売上が小さくなるのは経営上、非常に厳しい状況です。では、年間150店舗出店していたホーム・デポが新規出店をやめて、なぜ業績を伸ばせたのでしょうか。