ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #09

トライアルのスマートレジカートに学ぶ、店舗が「客単価」を上げるためのヒント

前回の記事:
日本の小売業が、世界最大ホームセンター「ホームデポ」のアプリ体験から学ぶべきポイント
 無人店舗、AI(人工知能)、モバイル決済…新たなテクノロジーが次々とリテール領域に導入されはじめています。また、大手リテール企業の倒産や、ネット企業による店舗チェーン買収も注目を集めています。本コラムでは、そうした国内外のニュースから可能なものは自ら体験しつつ、今後のリテールのあるべき姿と未来像を紹介していきます。
 

スマートレジカートを使うと客単価が上がる


 今回のテーマは、大手ディスカウントストアであるトライアルのスマートストアにおける顧客体験です。

 トライアルは、九州エリアを中心にスーパーセンター(食料品や衣料品、住居品などの売り場をワンフロアに集めて、一箇所のレジで全商品を購入できる小売業の形態)を展開しています。

 同社のコーポレートサイトで、永田久男会長(トライアルホールディングス 代表取締役会長)は挨拶として「安くて良い品を、お客様が満足して購入していただける仕組み作りの王道に取り組まなければなりません。そのためには、流通を科学とし、数値分析を行い、改善と改革に取り組める技術者の集団による時間と情熱をかけたシステム構築力が必要不可欠です」と語っています。

 いわゆるKKD(勘・経験・度胸)型が多い日本の小売業の中で、仕組みに注力した“個性ある企業”です。

 前編では、同社として最初のスマートストアである「スーパーセンター トライアル アイランドシティ店」での体験をもとに、タブレットカートの持つ可能性について紹介します。

■アイランドシティ店(2018年2月開店)
 
クレジット:スーパーセンター トライアル アイランドシティ店(筆者撮影)

 2018年5月以来、1年ぶりに再訪しました。1200坪のスーパーセンターであり、トライアルの店舗としては標準的な品揃えです。店舗に入ると、タブレット付きカートである「スマートレジカート」が並んでいます。


 
トライアル「スマートレジカート」(筆者撮影)

 この手の新しい取組みは、ご年配の方にはなかなか受け入れられないという先入観がありますが、アイランドシティ店は、2018年の訪問時で来店者の約4割、2019年の訪問では約5割がこのカートを使って買い物をしていました。

 このレジカートの機能は、次の3点が挙げられます。
 
  • カートに付いているスキャナーで商品をバーコードスキャンすると、カウントされて、今いくら買い物しているかがわかる。
  • スキャンした商品によっては、関連商品のクーポンが表示される。
  • トライアルオリジナルのプリペイドカードをスキャンすると、レジでのスキャンなしでチャージ金額から決済をできる(専用レーンで店員による買上げ点数の確認が必要)。

 「スーパーセンター トライアル アイランドシティ店」は、有人レジ(スキャンは店員、支払いは買い物客が自分でするというセミセルフ方式)が3台、セルフレジが10台、そしてレジカート決済の通過用レーンが2列あります。

 それぞれの利用状況は、視察した2回(いずれも平日昼下がりの客数が少ない時間)では、セルフレジが一番多く、レジカート決済と有人レジが均等という印象です。

 さて、様々な記事で「レジの無人化」という文脈から書かれることの多いスマートレジカートですが、私は別の点で注目しています。それはスマートレジカートを使用すると、2つの理由で客単価が上がるということです。

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