ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #11
九州発・トライアルを支える最新技術から、小売業の「半歩先の未来」が見えた
前編と中編に引き続き、大手ディスカウントストアであるトライアルの「スマートストア」がテーマです。今回は、これまで書き切れなかった、テクノロジー活用と店内レイアウトの工夫を紹介することで、半歩先の「小売業の未来」について考えます。
スマートフォン型カメラ、リテール活用の最前線
トライアルの天井を見上げると、大量のスマートフォン型カメラ(リテールAIカメラ)が目に入ります。
標準的なスーパーセンターであるアイランドシティ店(1200坪)で700台、家事の時間をセーブするというコンセプトのミニスーパーサイズであるQuick 大野城店(280坪)で200台、旗艦店メガセンター新宮店(3400坪)は1500台ということで、売場のサイズごとにかなりの密度で設置されています。
新宮店で採用された新型リテールAIカメラはAndroidスマートフォンをベースに開発されたもので、Wifiだけでなく有線ネットワークで接続できるうえ、HDMI、USBで周辺機器と接続できるように考慮されています。
このカメラの主要用途は、棚の欠品状況の把握です。棚状況の把握だけであれば、リッチな動画撮影ではなく、静止画のインターバル撮影でデータ量を抑えることができるわけです。
画像での商品識別までは取り組んでいないということで、棚の欠品把握はカメラポジションと棚割表を組み合わせて行なっています。1500台同時に商品個別識別となると凄まじいコンピューターパワーを必要としますので、現実的なテクノロジー活用だと思います。
注意点として、このオペレーションを実行するためには、適確な棚割管理ができている必要があります。テクノロジー導入前に、オペレーション改善の必要な小売業も多いと再認識しました。
ある売場では、有線LANに接続して動画撮影からの顧客行動分析を行っていました。
これは、商品前の通過人数はもちろん、接触回数をカウントしてPOSの購買数と比較することで、売行きは良くなくても興味は持たれているといった状況を把握するためのものです。小売業はもちろん、メーカーにとっても貴重な情報のため、協賛費ももらえるわけです。前述の通り、商品識別はしていなくても、ある程度の陳列量(またはサイズ)がある商品であれば、どの位置にお客さまの手が伸びたのかをカウントできます。
すでに店内に1500台付いているカメラを活用するだけのため、売場のどこでもこの調査ができるということが強みになる時代が早期に到来するのではないでしょうか。