ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #11
九州発・トライアルを支える最新技術から、小売業の「半歩先の未来」が見えた
スマートレジカートの個体識別と、飛び切り美味しい弁当
トライアルのスマートレジカートの車輪近くをよく見ると、縞模様のバーコードがあります。実はこのパターンは、カート1台1台で違います。決済時に専用レーンをカートが通過すると、ちょうど良いタイミングでレシートが出てくるのもこの仕組みがあって安定するわけです。
ビーコン(Bluetooth)なり、MACアドレスなり、個体識別する方法はあるわけですが、ある種ベタなバーコードが一番安定するうえコストも抑えられます。何が何でも最新テクノロジーを活用するのではなく、普及した技術を組み合わせることで成功した事例だと思います。
■トライアル Quick大野城店
Quick大野城店はトライアルとしては小型になる約280坪で、酒販売など以外は無人で対応するというコンセプトでつくられた店舗です。夜間はプリペイドカードか、そのカードを登録したスマーフォンアプリが入店に必要になります。
コンパクトな食品スーパー位の店舗で弁当のオーダー販売をしていることに、かなりの違和感を感じたことと(狭いから売場の品揃えに充てることが一般的です)、食べたレポートがほとんどないため注文してみました。
タブレット端末(写真左)でプリペイドカード支払いができますが、私はあえて290円の「唐揚げ弁当」をご飯少な目に注文して会計表を出力してみました。そして、会計表をセルフレジでスキャンして支払いすると、注文番号が発行されて、デジタルサイネージに「出来上がり表示」を待つという流れでした。
食べて驚いたのですが、これまで私が食べた「唐揚げ弁当」の中で指折りに美味しかったです。揚げたてというのが大きいとは思いますが、これが税込290円であることにビックリしました。価格だけでなく、出来立てという価値を提供しています。
さて、本題の売場レポートです。Quick大野城店は夜間省力型店舗ということで、1万2000SKU全てに電子プライスカードが付いています。全商品に付いているということは、需要と供給に合わせて価格設定を行うダイナミック・プライシングができるということです。人手をかけて見切り品のシールを貼る必要もなく、時間が経つごとに売価を変えられるわけです。
全商品への電子プライスカードの導入は、かなり珍しいと思います。一般的には新宮店のように生鮮食品中心に設置し、余裕があれば加工食品の一部にも、という店舗が多いはずです。ただし、そうなると「Kroger」を取り上げた回で紹介したように、電子プライスカードの上に販促POPを貼るスタッフが現れて効率化が台無しになります。