小売の未来は「ニューリテール」にある #02

中国アリババがeコマースの台頭で、存在感が薄れていく街の小さな店舗と連携する理由

前回の記事:
伝統的なリアル店舗、革新的なEコマース。その対決の勝者は、どちら?

パパママショップを「ニューリテール」に進化させた


 中国の最新のリテールビジネス形態である「ニューリテール」について解説した劉潤の書籍『新小売革命』で衝撃的なのは、前回紹介したジャック・マーと王建林との賭けのように、単なるEC企業と既存流通企業の戦いのようなレベルに話が留まらないことだ。

 日本で例えると、セブン&アイ・ホールディングスと楽天のどちらが勝つかというレベルではなく、それらが融合したビジネス形態が進んでいるということだ。

 劉潤によると、小売ビジネスにおける「情報」「物」「金」の3つの基礎的な流れにおいて、オンラインとオフラインの利点を最大化することがニューリテールの本質である。

 そしてオンラインとオフラインの特長を融合させることで、統合したシームレスなサービスを全体としてデザインすることが求められる。それは、次の3つの組み合わせになる。
 
  1. 情報流: オンライン:高効率性  オフライン:体験性
  2. 物流:  オンライン:広範性   オフライン:即時性
  3. 金流:  オンライン:利便性   オフライン:信用性


 アリババグループは、このニューリテールを実現するために米国のようにデジタルサイネージやテクノロジーを駆使した都会型の最新店舗をオープンするのではなく、中国全土のどこにでもある夫婦経営の小規模な雑貨商店「小売部」に目をつけた。

 伝統的な店舗である小売部は、これまでの常識であればeコマースの台頭によって存在感が薄れていくはずである。では、なぜアリババはそこに注目したのか。



 それは劉潤の視点からすれば、どこにでもある小売部は百貨店や大型モールと比較して、物の「即時性」に優れているからである。いくらeコマースがどんな商品も手に入りやすいからといって、のどが渇いたときにすぐに飲み物を買えるようなリアル店舗にはかなわない。また、その商品をその場で選べる「体験性」、そして実際に売り手と直接金銭のやり取りができる「信用性」も含めて、店舗の優位性が明確に存在する。

 そしてアリババグループの手腕は、同社の小売店チェーン「天猫小店」に参加させることで、そのような伝統的な“パパママショップ”である小売部をオンラインの力で高効率のコンビニエンスストアチェーン化したことに尽きる。

 だが、これは言うほど簡単ではない。先ほど説明したように、オンラインとオフラインの利点を上手に融合する必要があるからである。

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