ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #13

中国スーパー「盒馬鮮生」が、顧客から圧倒的に支持される理由がわかる1枚の写真

前回の記事:
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ニューリテールという言葉に踊らされてはいけない


 「ニューリテール」という言葉は、アリババ創業者のジャック・マーの提唱した概念です。有識者によって様々に解釈されていますが、アリババ ジャパンのWebサイトでは、次のように記載されています。
 

「ニューリテール」とは

「ニューリテール」は、アリババグループが提唱している中核戦略のひとつです。モバイルインターネットとデータテクノロジーを用いることで、小売業のデジタルトランスフォーメーションを実現し、オンラインとオフラインを融合させた新しい消費体験を提供しています。

※原文テノロジーをテクノロジーにしています。

出典:https://www.alibaba.co.jp/service/newretail/

 「オンラインとオフラインを融合させた…」という言葉からわかるように、同じぐらいのタイミングでバズワード化した「OMO(Online Merges with Offline/Online merge offline)」に非常に近い概念です。両者を比較すると、ニューリテールは「小売業」「データ活用」を強調しています。

 「OMO」は「O2O(Online to Offline)」のようにオンラインとオフラインを分けて考える時代ではないという文脈ですので、小売業に絞った話ではなく比較的広い概念だと考えます。

 このあたりは賛否あるかと思いますし、数年後にはそれぞれ違う意味合いになっているかもしれません。「オムニチャネル」も人によって捉え方が多種多様ですので、筆者は、用語は何でも良いと考えています。
 

アリババ「フーマー」の実力


 ニューリテールの代表格といえば、アリババが運営する「盒馬鮮生(以降フーマー)」です。

 フーマーは店頭在庫利用型ネットスーパー、グローサラント(「グローサリー・食料品」と「レストラン・飲食店」を組み合わせた業態)の機能を持つ食品スーパーです。

 店内には“いけす”があり、泳いでいる魚などを買って帰ることはもちろん、スマホアプリで注文して店舗3km以内であれば30分以内に配送してもらうことも、調理してもらって飲食スペースで食べることもできます。
 
右のピックアップ用バッグにオーダー品を入れて、左の機械に引っ掛けるとバックヤードに天井経由で運ばれる。このバッグの数が売上の大きさを物語っている。(写真はいずれも筆者撮影)

 飲食スペースがロボットレストランになっているフーマーの旗艦店を視察した記事が多いせいか、日本ではエンターテインメント性ばかりが注目されますが、この“いけす”は信頼を得る狙いが大きいものです。

 QRコードのタグがついている魚もあり、スマホで読み取ると産地が確認できます。食品偽装が横行し、食に対する不安が大きな中国でトレーサビリティをアピールすることで信頼が獲得できます。さらに、店頭で鮮度の高い魚がピックアップされて配送に回される光景を見ることで、次からは来店をしないスマホオーダーによる自宅配送も安心してできるわけです。



 その効果もあり、現状フーマ-の売上高の60%は「スマホで注文→店舗ピックアップ→自宅配送のネットスーパー型」です。売場面積辺り売上は、通常のスーパーの3.7倍で家賃の高い都市部への出店を実現しています。

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