オムニチャネルがもたらす変革、問われるリテールとメーカーの新たな関係 #01
「新たなステージを迎える流通とメーカーの関係」Supership 中村大亮
流通とメーカーの間に生じる「すれ違い」
そうなると、取引先メーカー内の営業部門の進化を期待したいところですが、自社のデジタルマーケティングの推進も必要な中、一朝一夕で流通側の進化に呼応できる人材を輩出することは困難です。実際、リテール側の最前線でオムニチャネルやデジタル施策を推進している人と話をしても「メーカーと話をしても噛み合わず、なかなか進まない」という話を耳にしました。
しかし、効果的な顧客接点をつくっていくために、流通とメーカーの協力は不可欠です。そこで、メーカー側(パートナー側)と流通側のすれ違いを埋めるために、ある種の使命感に駆られて昨年12月にはナノベーションとカンファレンス「リテールアジェンダ」を企画しました。 お会いする流通業界の方々に、このカンファレンスの開催告知をすると、「こういう機会がほしかった」という声をいただきました。実際に開催してみても、メーカーとリテールそれぞれのマーケティング戦略レイヤーの課題感や先進事例を共有できたたことに意義を感じてもらえました。
リテールとメーカー双方に向けたコンサルティングを行う身として、今後もこの溝を埋められるように働きかけていこうと思っています。
流通の進化をメーカーはどう支えるべきか?
激変する環境の中で生じているリテールとメーカーの間の「すれ違い」を埋めるために、メーカーには大きく2つの課題が残されています。ひとつは組織体制です。メーカーとリテールが連携して、目的達成のためのオムニチャネルを推進していくためには、専任部隊の創設が正解だと思います。
Amazonや楽天などのチャネル拡大に向けて担当者を置いている企業はすでにありますが、それに留まらずオンラインとオフラインのチャネル全体を俯瞰し、顧客接点を横断的に設計できる人材の育成も必要でしょう。こういった人材はこの領域以外あらゆる領域で必要とされている人材ではありますが。
もうひとつが、資産の有効活用(データやコンテンツ)への課題です。リテールが保有しているPOSデータは言わずもがな、先ほど述べたようにアプリ・LINEアカウントはコミュニケーションの接点でもあり、新たなトランザクションデータの宝庫です。
一方、メーカーは商品にまつわるコンテンツやそのカテゴリーの課題解決を促すコンテンツを保有しています。これらの資産をどう組み合わせ、拡張する顧客接点で活用していくかを提案するべきフェーズに入っていると思います。
今回は、激変する流通業界で巻き起こるメーカー側(パートナー側)とリテール側の「すれ違い問題」と、それを埋めるための2つの課題について触りだけお話しました。次回は、1つめの組織体制に関する課題を掘り下げていきたいと思います。
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