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オムニチャネルがもたらす変革、問われるリテールとメーカーの新たな関係 #02

デジタル時代にメーカーがすべき組織づくりと資産の有効活用【Supership 中村大亮】

前回の記事:
「新たなステージを迎える流通とメーカーの関係」Supership 中村大亮

デジタルマーケティングを推進する組織づくり

 前回、流通とメーカーのギャップに対して、組織と資産の活用で解決しましょうという問題提起をしました。今回は、メーカー側の視点で流通との関係を紐解いていきたいと思います。
 
 まず組織に関してですが、これについては会社ごとのカルチャーや組織の考え方があると思うので、ここで提示するアイデアも“One of them”と捉えていただければと思います。

 メーカーのオフライン流通向けのECも含めたデジタル施策の向き合い方は、いくつかのパターンがあると思います。
 
  1. 専門部門をつくり対応する
  2. 当該流通担当者がオン・オフ両方担当している(またはそれぞれ担当がいる)
  3. EC担当者が兼務している
  4. 営業企画や営業推進的な部門が大手流通を中心に担当している

 個人的には、②の当該流通担当者がオン・オフ関係なく担当しているのが理想だとは思います。なぜなら、前回申し上げた通り、これからの時代、流通側の顧客接点がオンライン・オフライン関係なく広がり、あらゆる接点で流通・メーカーの競争で顧客体験価値の向上が重要になる前提だと、オフとオンの担当者が分断されるのは、その価値をつむぎづらいシチュエーションになります。ただし、この方法は販売店ごとにオンラインマーケティングに理解がある営業担当者を配置するため、最もヒューマンリソースの負荷が高い方法になります。

 ですから、最初のステップは「①専門部門をつくり対応する」や、「④営業に近い企画系部門に担当してもらう形」か、あるいは大型チェーンは当該流通担当者が担当して、それ以外を専門部門が引き受けるハイブリッド型がいいかもしれません。この時に必要な人材は、次のようなスペックになります。
 
  1. 願わくは当該、流通のビジネスの全体像を理解していること。最低でも一般論としての流通側のビジネスのオーバービューを理解していること(至極当たり前ですが)。
  2. およそ流通側が使っているデジタルアセット(アプリ・SNS・動画配信プラットフォームなど)と、その効果効能を理解していること。
  3. デジタル施策の効果を数字で理解でき、語れること。

 この3つを備えた人材を確保するのは、なかなか難しいのではないでしょうか。①は営業経験で身につきますが、②③はデジタルマーケティングの世界で身につくスキルセットです。つまり、同時に両方のスキルを身につけることは現状、難しいのです。
 
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 では、営業経験者にデジタルマーケティングスキルをインストールした方がいいのか、逆にデジタルマーケティングスキルがある人に営業経験を積ませた方がいいのか、という選択肢になります。

 ここで私の答えは前者の「営業経験者にデジタルマーケティングスキルをインストールする」です。過去、両方の経験をしてきた立場として、対流通の営業経験はそもそもの現場を経験しなければ、技能習得や業界の本質的な理解につながりません。

 他方、デジタルマーケティングのスキルセットは、こちらも実践が最も早い近道ではありますが、それ以外にも外部セミナーなど成長を加速させる機会は営業スキルよりも恵まれていると考えています。決して、デジタルマーケティングのスキルセットが簡単に身につくと言っているのではなく、成長の機会が圧倒的に多いということです。

 これらのステップ、人材育成方法は正解と言い切る自信はまだありませんが、こういった視点で組織や人材を見つめなおしてみたらいかがでしょうか。

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