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リテールから考える「マーケティングの本質論」 #02

あなたのマーケティング策が失敗する、たった一つの理由【コメ兵 藤原義昭】

社内の空気をつくる。

 私の場合、近い将来に実施したい施策や事業がある場合、周りの部下や上司、同僚に「こんなことを考えてるんだ」という雑談をよくします(しょっちゅうされる方は、たまったものじゃ無いですね)。

 これには、3つの理由があります。1つ目は話すことで、自分へのコミットメントを強化できます。人に話して、実施しない人間は恥ずかしいですよね。

 2つ目は人に話して、フィードバックをもらうことで、さらに実現できるレベルまでアイデアを練ることができます。

 3つ目は組織を動かす空気をつくり出せるのです。様々な人や場所で話し続けると不思議なもので、個人の言葉が集団の意識に変化していく瞬間がおとずれます。私の好きなTEDのプレゼンテーションの中にデレク・シヴァーズのプレゼンテーションがあります(https://ted.com/talks/derek_sivers_how_to_start_a_movement?utm_source=tedcomshare&utm_medium=email&utm_campaign=tedspread)。

 このプレゼンテーションの注目すべき点は、ムーブメントへ乗り遅れることのリスクです。ムーブメントは、ひとりの変人から始まります。そこに2人目、3人目と仲間が加わり、臨界点を超えると、このムーブメントに乗らないことの方がリスクと感じるようになります。

 社内の空気も同じです。言い続けて仲間をつくることで、「いつやるのか?やらないのか?」と周囲から問われる空気を生み出すことが大切です。人間は組織の中で少数派になることを恐れます。多くの人が関わることで、ひとり当たりのリスクも少なくなります。最後は、このムーブメントに乗らない方がダサく見えてしまう状況までいけたら、しめたものです。

 人間だれしもが評価を気にし、自分の選択が失敗したときのリスクを恐れます。そして会社にとって正しくても、自分にメリットがないことは、なかなか行動できません。これらは、企業にとって正しい行動が個人レベルでもメリットとなるよう仕組みと空気を変えることで解決します(もちろんそれは非金銭的報酬で)。

 マーケティングは、頭で考えるフェーズは全体のほんの少しです。すべては現場の行動にかかっています。施策の失敗は現場が動かなかったせいではありません。現場を動かせなかったマーケターにあるのです。

 社内説得とよくいいますが、それは間違いです。正しくは、社内共創です。「健全な内向き企業」になることが、いま求められています。
 

(※)

金銭的・非金銭的報酬とワークモチベーション
安藤至大(日本大学准教授)
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/07/pdf/026-036.pdf
続きの記事:
知らないと損する「ゴールとプロセス設定」の効果的な使い方【コメ兵 藤原義昭・前編】
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