関西発・地方創生とマーケティング #17

「毎日そこにいること」シャープさん(山本隆博)

前回の記事:
なぜ祇園辻利は、お客さまから長く愛され続けるのか

Twitter上に八百屋を開いている感覚


 「それは商店街で小商いをする感覚。」

 Twitterを更新する日々についてこう語るのは、現在のフォロワー数が63万人を超えるシャープ公式Twitterの中の人「シャープさん」として、10年近く大阪でつぶやき続けている山本隆博さん。

 大企業の社員とは思えない雰囲気をまといながら、時折こちらの目を見て微笑む。2人で淡々と話しながら、あっという間に時間が過ぎていく。

 今回は山本さんのお話がとても面白く学べるポイントがたくさんあったので、次の文章からは、山本さんの発言を語り口調そのままに紹介させていただきます。
 

「シャープさん」が語る“振る舞い”

  
シャープ 山本隆博さん
 
 言うなれば、Twitter上に八百屋を開けて、軒先に座っている感覚です。店の前を通りかかる常連さんと世間話をして、ときおり買い物の相談を受けます。

 通りがかる人には、決していきなりキャベツを売りつけるようなことはしません。「今日は寒いですね~」なんていう世間話から、必要があればお客さんの要望に答えます。

 それがとたんに「マーケティング」の話になると、「なんで店の前を通る人に、もれなく野菜を売らないんだ」と白い目で見られたりするわけですが、こちらは対面で商売する、小商い感覚ですから、店の前を通る人にいきなりモノを売りつける方が異常なわけです。

 ましてや常連さん相手なら余計に。私はそこに、広告やマーケティングのある種の暴力を感じます。「売れればいい」とは私だって思うけど、売ろうとはしません。Twitter上では、売ろうとしている風に感じられることがないよう、振る舞いには気を付けます。

 一般的にマーケティングと言うと、何がしかの予算と組織力を投じて、ある目論みや企画を世の中に投下して、その仕掛けを売上でもって回収することを指すと思いますが、私自身は「モノを売る」という小さな行為自体も、マーケティングだと思っています。

 そういう意味では、私は大文字のマーケティングをしているという意識はないけれど、商いの原点とでも言うような行為として、私もマーケティングをしていると思います。小さなマーケティングというか。

 スタンスとしては、「広告はしないけど告知はする」。広告はしないと言えども、企業アカウントですからその存在自体は営利目的で、広告です。企業はその製品の存在を知ってもらわないと、そもそも存在していないのと同じ。だからアナウンスはおずおずとします。

 アカウントには日々膨大なリプライが寄せられますが、いちばん多いのは「シャープ製品を買ったよ」という報告と、買い物相談です。買い物報告にはもちろん必ずお礼をします。相談も多い日には100件ほど受けますが、必ず返答します。求められているので。

 必要としている人にはお勧めするけど、そうでない人にはお勧めしません。だってそのおすすめはその人にとって必要ないから。もちろん、その時が来れば、全力でお勧めしますけどね。

 シャープでは扱っていない商品、たとえば食洗機の相談があれば、扱っているパナソニックを案内します。だって、それがお客さんのためになるから。

 属性とかペルソナとか、お客さんの選別は考えません。そもそも家電やスマホは、ターゲットにならない人はいませんから。
 
パナソニックを紹介する「シャープさん」

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