次のECの鍵は「Cross Dimension」にある #01
自己変革なくして成長なし!テクノロジー活用の要諦【ディノス・セシール 石川森生】
2018/06/22
- 通信販売,
- EC,
- ダイレクトマーケティング,
5月に家族でキャンプに行った
先日、5月の気候の良い時期に、家族でキャンプに出かけた。東京で生まれ育った私は、アウトドア好きだった父の影響をロクに受けておらず、子供の頃の曖昧な記憶を頼りに、まずはキャンプガジェット(用品)から集めることにした。何はともあれ、まずは形から入るタイプである。そして、男子たるものせっかくやるのであれば「カッコイイもので揃えたい!」ということで、ディノスで扱うグランピングのサイト「GLAMP LIFE/グランプライフ」を物色して、準備した。さて1日目はバーベキュー。つつがない進行で私は父親としての面目躍如。2日目は釣り。川釣りでニジマスやイワナを狙う、などという考えは初心者には毛頭なく、大自然の中の釣り堀で釣った分だけ焼いて食べられるスポットへ。ここで問題が起きた。魚は釣れた。アッサリと。だが、焼くのがとんでもなく大変だったのだ。
店のオヤジが指示した場所には石と木だけが置かれている。期待で目をキラキラさせた子どもたちの群れを背に、その場で立ち尽くすしかない見ず知らずの父親たちに妙な連帯感が生まれたのは言うまでもない。それぞれが持つナレッジをクロスさせ、なんとか火を起こそうと必死にうちわを扇いだ。そのとき、近くにいたひとりの少年が、父親が車から出してきたアイテムをもって自慢げに現れた。LOGOSの送風機である。
「これがあればウチワで扇いだりしなくてもいいんだよ!」
完全なる敗北感を感じたのは、我が娘の悔しそうな顔を見た時だった…。
ガジェット好きは趣味だけにしておけ!
さて、ECをグロースハックさせる手段のひとつに、さまざまなソリューションの活用がある。A/Bテストツール、MA ツール、レコメンド、接客ツール、もしくはカスタマージャーニーマップなどである。最近では、AIやディープラーニングなどの機能をまとい、さながらキャンプガジェットのごとくデジタルマーケターの心を鷲掴みにするツールも多い。そして、そのツールの導入が目的化し、自分たちの運営サイトで昨日何が一番売れ、どのぐらいの利益をもたらしたのかを把握する前に、管理画面から吐き出される経由売上レポートの無機質な数字を見つめてPDCAを回す。
しかしながら、MAツールを導入しても、自社の顧客を満足させ売上を上げるためのシナリオが描けない、カスタマージャーニーマップの作成に本気で取り組んだところ100個のシナリオができてしまい、結局ゴールデンルートが可視化されないといった例は、枚挙にいとまがない。
ソリューションはあくまで手段であり、自らの商売とテクノロジーを掛け合わせて、いかに顧客価値を向上させるかという議論がない中で導入しても、何の役にも立たない。これは「Cross Dimension」以前の大前提であり、本稿を通じて鳴らす警鐘のひとつである。
例えば、八百屋の店主は、この時期にどこの何の野菜が美味しいのかを知らずしてスーパーの野菜売り場には勝てない。さらに、その野菜を使ったオススメの調理方法まで伝えられなくては、顧客からの信頼と称賛は得られない。まず行うべきは、自社商品の特徴の理解と、最適なタイミングでの販促活動およびコンテンツの提供である。つまり、ガジェットを買い込んで、火を起こせる気になっている場合ではないのだ。
5月の晴れた空の下、家族でニジマスを食べた。あんなに本気でウチワを扇ぐのは、この先あと何回もないだろう。そして背後には、最後まで送風機で風を送り続け、一向に強くならない焚き火の火力と格闘するお父さんの姿があった。娘は、それを不思議そうな顔で眺めながら魚を頬張っていた。
ちなみに今回、役に立たなかった送風機だが、どうやらBBQコンロに使うには最強のガジェットらしく、我が家のラインアップに加わることが決定している。
- 1
- 2