ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #24

買い占め対策。品薄の「マスク」をドラッグストアの優良顧客にだけ販売する方法

 

店舗からの「出来ない!」へのアドバイス


 こうした施策を本部で実施しようと思ったものの、店舗から「出来ない」という答えが返ってくる可能性があります。
 
■想定される「出来ない理由」

・試しに販売時間をずらしてみたのですが、お客さまからの問い合わせが増えて、逆に従業員が精神的に参ってしまうという事態も出てしまいました。

・優良顧客への個別クーポンは「アプリを使えないお客さまから批判が来る」と思うと出来ない。

 そうした声に対するアドバイスです。

 まず、欲しいと考えるお客さま全員に行き渡らない以上、何をしても苦情は出ます。何も変えなくても、苦情は来ているのです。これが前提です。ひとりで買い占める層の排除による「不公平の解消」と、朝は来られないけれど、「(収益的にも)大切な顧客に多少でも買える機会をつくる」ことが大事だと考えます。

 先ほどご紹介したように、例えば、年間の購入粗利益額が大きく、かつ夕方から夜の購入が多いお客さまだけを対象に、配信翌日まで有効なクーポンを配信するという方法が考えられます。

 事前のオペレーションとして必要なのは、「入荷即販売をせずに貯めておく」こと。当日・翌日のみ有効な優良顧客向けの先着順販売とはいえ、当日・翌日に来ないこともあるので、残りをどのように販売するかなどを決めておく必要はあります。

 アプリが使えないお客さまがいることへの批判については、ビジネスをデジタルシフトする機会と捉える「経営方針のパラダイムシフト」が必要だと考えます。

 もし個別配信できるアプリがない場合は、単純に販売時間を決めておいて、店舗Webサイトに「販売◯分前に告知する」というのもひとつの手段です。このメリットは電話や店頭問い合わせに対して、次回からはWebを見てもらうという習慣ができると、多少なりとも問い合わせが減ることにあります。

 販売時間は上述の通り、店舗のシフトと作業予定を勘案して設定するのが良いです。優良顧客へのおもてなしとはなりませんが、ビジネスマンや働く女性の不公平感を多少なりとも緩和できる可能性があります。
 

最後に

 以上が、品薄の「マスク」をドラッグストアの優良顧客にだけ販売する方法です。当初、今回の後編では「ダークストア(実店舗とは別のネット販売専用の物流センター)ハイブリッド」の新業態を書くつもりでした。

 しかしながら、ドラッグストアの現場が疲弊しているツイート(参照:https://agenda-note.com/retail/detail/id=2705) を見ているうちに、「今すぐに本部が動けば実現できる対応」を書く必要があると感じて、内容を変更しました。

 新業態プランについては、またの機会で紹介したいと思います。
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