関西発・地方創生とマーケティング #21
「マーケティングの4Pをもう一度、見直そう」ダイキン工業 片山義丈氏が、そう語る理由
2020/06/17
前編に続いて、ダイキン工業 総務部 広告宣伝グループ長 部長の片山義丈さんが「なぜ成果を出してこられたのか」、その背景にある考え方をいくつか紹介していきたいと思います。
マーケティングは「4P」が大事
片山さんは普段から宣伝グループ内で、あえて口を酸っぱく「4P」と言っているそうです。「4Pが分かるマーケターが必要。特にデジタル系で」と。
「経営者は創業時、こんないい製品ができた(Product)、いくらで売ろうか(Price)、どうやって売ろうか(Place)、どうやって伝えようか(Promotion)と考える。マーケティングの4Pを一筆書きのように一貫して進めていく。だけど、企業が大きくなって、一つひとつのPに深さや専門性が出てくると、組織の壁が立ちはだかる。欧米では、その弊害が分かっているので、それぞれのPすなわち組織に横串を指すCMOというポストが機能している。だけど、それがダイキンを含めて日本企業では難しい」
片山さん自身は、製品開発や価格を決める権限がない中で、少しでもCMO的な横串を刺せないか模索したこともあったそうです。でも、さすがに3兆円企業。「自分には、それを実現する能力はなく無理だった」と。
ただし、コントロールはできないけれど、そういった社内情報は頭に入っているため、Promotion以外の3つのPを現状で仮置きし、将来を予測した上で、それを踏まえた意味のあるプロモーションはどうあるべきか、を常に考えて実行しているそうです。
一方で、これらはあくまで「片山さんのマーケティング」であって、ダイキン工業のマーケティングではないとも言います。なぜならBtoB企業という面からも「良いものをつくれば、売れるというスタンスは変わらないからだ」と言います。では、ダイキン工業のマーケティングとは何なのでしょうか。
Place ダイキンの強みは流通
私の個人的なダイキンのエアコンのイメージは「高いけど、良い製品」ですが、片山さん曰くプロダクトに強みがあるのはもちろんだが「特に流通。さらに業務用が強い」のだそうです。
この流通(Place)については、海外での売上への貢献が顕著で、現に売上の8割は海外が占めます。特にエアコンの普及率が低いアジアでは取り付け方、修理の仕方を現地の人に教えて、流通を押さえているそうです。
一方で、競合他社は冷蔵庫など複数製品を扱っているため、取り付け修理など手間のかかるエアコンよりも他の商品の販売に比重がかかっています。ただ、ダイキンにはエアコンしかないので、必死に販売店を開拓するそうです。
そしてその強みは、かつての「ナショナル(現パナソニック)のお店」のように、未来永劫に渡って続くかどうかは分からない、と危機感も持っています。