OMO時代のリテールデジタル戦略 #03

営業再開したPARCOから見えてきた、小売業のこれから

前回の記事:
コロナ危機を迎えた小売店舗、今こそ本気で「OMO」に取り組まなければならない
 

生活者・消費者の中で、これから起こる変化


 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の段階的な解除により、地方都市では5月中旬頃から、首都圏や北海道では5月末頃から徐々に一般の店舗や商業施設の営業再開が始まりました。感染拡大の再燃・第二波を用心しつつ、社会経済の活動レベルを引き上げていく段階に入っています。 

 ショッピングセンターPARCOも、地方店は5月中旬頃から順次、都心店や札幌店は6月1日から、さまざまな感染防止対策を講じつつ営業(時短)を再開しています(2020年6月上旬時点)。

 緊急事態宣言の発令以前に比べると、当然ながらお客さまは減少していますが、雑貨・ホビー・インテリア・家電など暮らしにまつわるアイテムや化粧品・日用消費財の買い足しといった、目的買いのお客さまを中心に店頭でショッピングを楽しんでいただき、お客さまやテナントスタッフさんから営業再開を喜ぶ声が多く聞かれます。 

 とはいえ、社会経済の活動レベルの引き上げは始まったばかり。感染拡大の再燃・第二波の懸念もあって、すぐに元通りになるとは考えづらい状況です。これから生活者・消費者の中でどのような変化が起こるのでしょうか。そして小売企業はどのような対応を迫られるのでしょうか。一緒に考えてみましょう。 
 
営業再開した渋谷PARCO
 

with コロナ ~ 在宅消費・外消費の新しいバランス


 約2カ月間もの自粛生活の中で、多くの生活者・消費者の「在宅消費と外消費とのバランス」が大きく変化しました。社会経済の活動レベルの引き上げに伴って今後、自宅外での消費のバランスが引き上がるのは間違いないですが、以前通りに戻るとは限りません。生活者・消費者の中では、改めて「何の消費に対してお金を使うか。消費への再選別」が起こると考えられます。 

 これまで「この商品を気に入って買っていたけれど」「このお店を気に入って足を運んでいたけれど」、いまの自分にとって「本当にこれが一番いいのか?」「本当にこれを買う必要があるのか?」という再選別の作業、つまり動機や意義・価値の見直しです。 

 オンラインで出会った別の企業の商品で十分代替できてしまったり、ECで買うことに慣れ、店舗へ足を運ぶ動機が薄れてしまったり、外(そと)消費を控える中でその必要性を次第に感じなくなってしまったり……。

 小売企業にとっては、前代未聞とも言える「巣ごもり生活」の中でオンラインを中心に新たな購買(あるいは非購買)体験をした生活者・消費者に、改めて選んでいただけるか、足を運んでいただけるかという問題です。 

 さらに生活者・消費者による再選別が合理的な面での見直しにとどまらず、「本当に支持したい企業・ブランド・お店なのか?」といった情緒的な面でも起こり得ることを考えると、ブランディングやマーケティング、顧客コミュニケーションの再設計が必要になるでしょう。 



 何より「これまで通りのマーチャンダイジング(商品)を、これまで通りの販売チャネルで、これまで通りの販売方法で」といったやり方では、この先苦戦が強いられる可能性が高いわけです。この在宅消費・外消費の新しいバランスに「マーチャンダイジング」をどうマッチさせていけるかが、非常に重要になってくるでしょう。 

 不動産賃貸業であり商業施設のプロデューサーであるショッピングセンターも、これまでの「属性やターゲット層といった“集合体・集団”として捉えたお客さまと、それにマッチする魅力的なテナントさんの“集合体・集団”とのマッチング」に留まっていてはいけません。

 商品単位・サービス単位で捉えたお客さまの嗜好や行動をもとに、それぞれのお客さま(個客)にマッチする商品やサービス、コンテンツを最適なシーン・タイミングで、気の利いたコミュニケーションで提案できるようになる必要がある。そうしてテナント企業のリテール活動をより強力に支援できるようになる必要がある、と考えています。 

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