関西発・地方創生とマーケティング #23
マーケティングは「誰に売るか」より、「誰が売るか」が大事 【ユーグレナ 永田暁彦】
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ユーグレナ(和名:ミドリムシ)を活用した食品や化粧品の販売、バイオ燃料の研究などを行うユーグレナの取締役副社長 永田暁彦さんにインタビューする機会をいただきました。マーケティングの本質が垣間見えるお話を3回に分けて紹介していきます。
ミドリムシ、売れるものなら売ってみろ
「ミドリムシ」、この言葉を聞いたことがある人は90%。「ユーグレナ」、という言葉を聞いたことがある人は50%。全世代に向けた認知率調査の結果だそうです。
さて、皆さんはユーグレナと聞いて何を思い浮かべますか?
ミドリムシの生産拠点? ミドリムシを使った飲み物の販売会社? はたまた、飛行機を飛ばすためのバイオ燃料の研究機関?
永田さんに聞いてみました。すると、マーケティングを専門にしたメディアからの取材であることを考慮いただいてか、「ユーグレナ社は、マーケティング会社です」というお答えをいただきました。
「日本には多くの大学農学部発ベンチャー企業がありますが、
私にとって、ユーグレナは小学校の理科の授業で、顕微鏡をのぞくと動いていた緑色の微生物です。単にそれだけで、食べたり、何か別の用途に使ったり出来る、という認識はありませんでした。
しかし今では、何となく「体にいいモノ」というイメージを抱いています。皆さんの中にも、同じような感覚を持っている人が多いのではないでしょうか。
そこで次に、ユーグレナ社がどのように人の認識を変えたのか聞いてみました。永田さんは、次のように話します。
「すでに多くの人から認知されている企業と、誰にも知られていないベンチャー企業では、マーケティング戦略が違います。たとえば、大手飲料メーカーが新しく飲み物を発売する際は、ブランド価値や機能性などについて、ぶれることなく、そして誤解されることのないように、『これが私たちのブランドです』と伝えます。しかし、それは数億円の広告費を使える会社だから出来ること。
では、お金がないベンチャー企業はどうすればいいか。我われが創業当時に採用したのが、あえて”素材ユーグレナ”ではなく、”素材ミドリムシ”という名前を前面に押し出す戦略です。当初は取引先企業から『売れなくなるから、“ミドリムシ”を出さないでほしい』と言われました。しかし、ユーグレナ社という社名だけを打ち出していたら、今ほど多くの人からは認知されていなかったでしょう」