関西発・地方創生とマーケティング #24
株主になってもらう。CFOとしてのマーケティング 【ユーグレナ 永田暁彦氏】
前編に続き、ユーグレナ(和名:ミドリムシ)を活用した食品や化粧品の販売、バイオ燃料の研究などを行っているユーグレナ社の取締役副社長 永田暁彦さんへのインタビューをお届けします(第2回/全3回)。
ユーグレナとの関わりで、人の消費行動を変えたい
永田さんが、これまでで一番マーケティングをしていると手ごたえを感じていたのは、CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)の時だそうです。
「なぜマーケティングではなく、ファイナンスの責任者の時に?」と問うと、CFOとして、「株を誰に買ってもらうかという概念を変えてきたからです」と言います。
永田さんはCFO時代に、ユーグレナが消費者向けの商品をつくり、社長の出雲さんのキャラクターも個人から愛されるという考えのもと、機関投資家だけでなく、個人投資家へのアプローチを強化しました。
「ユーグレナ社の株が値上がりすることだけを目指すのではなく、株を持っていること自体に価値を感じてもらえるように、日本の投資家の考え方を変えたかったんです」と永田さんは話します。
一般的に「マーケティング」と聞くと、商品に対するエンゲージメントを高めたり、購入動機を生み出したりする活動だと認識されがちです。しかし永田さんにとってマーケティングとは、前編でお話しされたように市場の意識変容であって、「ある種の布教活動に近く、自分たちの考えと一致している人の比率を増やすこと」だと言います。
永田さんが目指す理想は、ユーグレナ社の商品や株を持つことによって、その人たちの消費行動が変わること。ひとつの商品から始まって、生活様式がサステナブルなものに変わっていくことを目指しているのです。株主になってもらうことも、その活動の一環。ユーグレナの思想について知っていただき、行動を変えてほしいと思っているわけです。
「売上を10倍にすることではなく、自分たちが考えている世の中に変えていくこと。売上が半分になっても、社会が良くなるならいいと考えています。“ユーグレナ“と聞いて、自分たちの活動が想起できるか。そして、生活者が自分たちと、株主として、消費者として、関わりたいのかどうか。そういう、ユーグレナ社という企業を体現できる人たちである『ユーグリー』が増えるよう、コーポレートのマーケティングを通して生活者の意識を変容させたいのです」と語ります。