ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #31

ワコール、FABRIC TOKYOが挑戦。新3DボディスキャンがZOZOと同じ末路を辿らない理由

前回の記事:
商品を販売しても1円もお金が入らないお店の正体。日本進出 b8taの最新店舗を体験
 

失敗に終わったZOZOSUIT


 3Dボディスキャンによるパーソナライズされた製品提供と言えば、ZOZOSUITを思い出す人が多いでしょう。当時、筆者も注文して測定してみたのですが、エラーが連発し(スマートフォンの指示に従い、十数回体を回しながら撮影)、なかなか難しく上手くできませんでした。

 また、測定結果から製品を購入した人の声は賛否両論でした。どうも測定に多少の誤差が出てしまっていたようです。これは無料配布をするためコスト削減を重視した結果、当初想定していたセンサー付きのスーツから、例の水玉スーツになったことが原因のひとつでしょう。

 さて、それから数年経ち、新たな3Dボディスキャンを活用したパーソナライズサービスが出現してきました。これは、ZOZOSUITと同じ末路をたどるのでしょうか?
 

ワコール「3D smart&try」&マッチパレット 


 ワコール社の「3D smart&try」は、3Dスキャナーにより5秒間で全身150万カ所のサイズ測定をすることで体型を分析し、その結果を元にAIと対話することで要望を加味したレコメンドを行う仕組みです。女性専用のサービスとなっていますので、残念ながら筆者は体験できていません。
 
https://www.wacoal.jp/smart_try/

 以前、ワコールの下山執行役員とパネルディスカッションを行った際に、「3D smart&try」について聞きました。

 「他のスキャニング技術と、『3D smart&try』のサービスが異なるのは、正確にサイズを計測するだけでなく、お客さまの要望や嗜好を反映したリコメンドまで繋げているという点」

 「精度という点においても、点間距離だけでなく、人間の身体が固定的ではないということに着目し、容積算出を踏まえてサイズリコメンドをしている」

 こうした発言からも分かるように、実利用を踏まえた正確性と同時に、顧客の嗜好や要望を加味することで納得感を提供し、96%という高い満足度を引き出しています。実際にリピートして測定する顧客が多いようで、測定サービスの提供が来店機会の増加につながっているわけです。

 この「3D smart&try」を活用して、計測したサイズに基づき、プロのスタイリストが顧客それぞれにマッチするスタイリングを提案するサービスとして伊勢丹新宿店が「マッチパレット」を提供しています。約50ブランド、約1万種類の洋服から、顧客の要望に沿う最適なスタイリングを提案します。顧客のサイズの悩みと、選ぶ大変さという課題を解消し、納得感が得られる仕組みになっています。

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