関西発・地方創生とマーケティング #26

「プロデュースした商品は、売れなくてもいい」と語る理由。工場再生請負人 セメントプロデュースデザイン 金谷勉

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多くの町工場を立て直してきたデザイン会社


 皆さんは、全国の町工場や工房の再生を手掛けているセメントプロデュースデザインというデザイン会社が大阪にあるのをご存知ですか?

 私はその代表を務める金谷勉さんがテレビ東京「カンブリア宮殿」に出演されているのを拝見し、面白い方がいるものだなあと思い、どうして大阪の小さなデザイン会社が町工場や工房の立て直しをすることになったのか、そしてマーケティングとデザインの関係について、取材させて頂きました。

 金谷さんは1999年に大阪でセメントプロデュースデザインを創業し、現在は星野リゾートやコクヨなどの大手企業とお仕事をされる一方で、500を超える工場や職人との連携を進め、経営不振にあえぐ町工場や工房の立て直しにも尽力していらっしゃいます。
 
セメントプロデュースデザイン 金谷勉さん(右)

 例えば、愛知・瀬戸市にある陶磁器づくりに使う型の製造会社「エム・エム・ヨシハシ」とはティーカップ「トレースフェイス」を制作し、累計販売は実に1万6000個にも及びます。
 
トレースフェイス

 さらに、東京・墨田区の自動車部品会社「笠原スプリング製作所」とは、フードピック「ツリーピックス」をつくり、おかげで同社の工場は閉鎖を免れています。
 
ツリーピックス

 そして、2020年11月には大阪市に全国の産地から職人の技術が詰まった商品を扱うお店「COTO MONO MICHI AT PARK SIDE STORE」をオープンさせました。
 
COTO MONO MICHI AT PARK SIDE STORE
 

自分たちでPRできるものをつくる


 セメントプロデュースデザインは、起業当初はポスターのデザインなどの下請け制作を主に手がける会社だったそうです。

 ですが、そうした仕事を受ける中で「自分たちがデザインで食べていくためには、自分たちで考えてつくる。そして会社をPRできるものをつくる必要がある」と考えるようになり、自社商品をつくるようになったそうです。

 そのうち、その「自分たちの製品をつくり、それをきちんと伝えて買ってもらうこと」が、不振にあえぐ多くの工場が置かれていた環境にマッチしていたこともあって、そうした人たちから相談が寄せられるようになったと言います。

 それは意図して起きたことではなく、はじめは地域貢献や町工場の立て直しについては「全く考えていなかった」と、金谷さんは当時を振り返ります。
 

大事なのは熱量


 そうして、多数の相談が寄せられるようになります。ただ、当たり前ですが、相談してくるすべての会社を必ず成功させられるわけではありません。

 そこで、再生できるのか否かを見極めるポイントはあるのか、尋ねてみたところ、次のように話をされました。

 「工芸は最終商品をつくっていることが多いので分かりやすいけど、部品などをつくる工場の場合、そこがやっていることやできることと、商品が直接結びつかないことが多いのです。

 とは言え、20年以上この仕事をしてきていますから、工場の機械を見れば、ある程度の見立てはできますね。そうした中で、一番大事なのは依頼人の熱量です。そして、長く継承される企業になるためには、『自分たちが何の仕事をしているのか』、社員が語れるものがないといけません。

 だけど、多くの町工場や工房にはそれがない。だからそこを変えて、誇りに思える魅力のある会社にするために、絶対的な目標を立て、違う景色を見せることが大事になります。あくまで実際に動くのは彼らなので、『これをやりたいから助けてくれ』と言われれば助けますが、『何をやったらいいか、教えてくれ』と言われてもあえて教えないのです」

 熱量が大事というのは、私も納得です。いくら良い設備や技術を持っていても、本人のやる気、熱量が高くないと結局は上手くいかないでしょう。

 サポートする側からしても、多少難しいと感じる内容であっても、依頼人に熱量があれば、それに押されてなんとかしてあげたいという気持ちになるものです。これは普段、皆さんが仕事をする上でも同じなのではないでしょうか。
 
依頼先企業と、その担当者の現状を変えたいという熱い思いから生まれたミミカキ。
 

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