ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #34

環境省のオープンデータを、小売業はどう活用できるのか

前回の記事:
コロナ禍で進む、店舗のコワーキングスペース化。体験して見えてきた可能性
 

オープンデータ化で官民協働を推進


 先日、環境省の持つデータの活用について議論する場に呼ばれました。筆者は、JDMC(一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム)のカンファレンス委員であり、データのユースケース(使用例)について環境省から提案してもらえないかという問い合わせがきたため、協力したという経緯です。

 そこで今回は、「環境省の持っているデータを、小売業はどう活用できるか?」というテーマを考えてみたいと思います。環境省に何庁があり、それぞれがどういう役割をしているかに興味がある方は、以下のリンクをご覧ください。

 参考:環境省のご案内

 まず議論の場では、JDMC側の参加者からデータの整備状況と、その精度、鮮度、粒度、網羅性などへの質問が相次ぎました。現状、各庁及び課におけるデータの整備状況はまちまちです。

 環境省のデータマネジメント方針は4つあり、その「方針2」が「デジタル時代のデータ品質確保(データの品質向上、データの一元化、データの標準化)」です。では、“1丁目1番地”と言える「方針1」は何でしょうか?

 それは、データ・エコシステムの実現です。「1-1:環境データのオープン化」に記載されていますが、官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)では、国及び地方公共団体はオープンデータに取り組むことが義務付けられています。

 オープンデータへの取り組みにより、国民参加・官民協働の推進を通じた、さまざまな課題の解決、経済活性化、行政の高度化・効率化などを図ることが目的です。ここで言うオープンデータの定義は、①営利目的、非営利目的を問わず、二次利用可能なルールが適用されたもの、②機械判読に適したもの、③無償で利用できるものの3つです。

 次に、「1-2:データ連携による新たな価値の創出」があります。そして、その先に「1-3:データドリブンの政策形成」がありますが、今回、思考の対象にするのは、「1-1」と「1-2」のみです。環境省とJDMCで共創したいのは、「オープンデータ化に対するニーズが強い」ものは何かを見極めたいからです。

 つまり、データが未公開であれば(整備した上で)、公開を検討する。公開済みであれば、より使いやすい形式でのオープン化(具体的にはPDF→CSV→API化)を目指すなど、優先順位を付けたいわけです。
 

環境省が所持するデータで活用できるのは?


 「PRTRデータ管理・公表・開示システム」「化学物質環境実態調査データベース」など、25に及ぶ情報システムに、複数のデータが保有されています。ここでは、小売業が関連する可能性がありそうなものだけを列挙します。

 なお、SDGsに取り組んでいるように見えて、IR効果がありそうな…というデータは除外します。逆に言えば、環境省で所持するデータをそうした目的で使う方法は、それなりにあると考えます。

 そうした考えの上で、小売業が活用できるデータは、次の4つだと考えます。
 
  • 大気汚染物質広域監視システム

 大気汚染及び花粉飛散に関するリアルタイムな情報提供を行うシステムです。風向・風速、気温、窒素酸化物、光化学オキシダント、PM2.5などの濃度、花粉の飛散量、黄砂飛散量など。
 
  • 環境省熱中症予防情報サイト

 熱中症予防に関する情報提供を行うシステムです。
 
  • 水質関連システム

 水質情報の収集・公表を行うシステムです。
 
  • 産業廃棄物行政情報システム

 産廃業者の固有番号・業者情報管理、産廃業者に対する行政処分情報の収集・提供を行うシステムです。

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