関西発・地方創生とマーケティング #29後編
ホームセンター業界からの視察が絶えないDIY FACTORY山田岳人氏が語る、「マーケティングとは、幸せの量を増やすこと」
コロナ禍で外出を控えるようになって、ECで買い物をすることが増えたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、自宅にいる時間が増えて、できるだけ快適に過ごしたいと、DIYを始めた方もいらっしゃるかもしれません。
買い物とDIYの2つを同時に叶えてくれるECサイト「DIY FACTRY」を運営する大都は、もともとは大阪に本社を持つ工具の卸問屋でしたが、2002年にいち早く工具のEC事業をスタートし、外部のE Cサイトにも出店して急成長。その後もDIYの流れに着目し、コロナ禍の2020年には「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」の「ガーデン・DIYジャンル」の大賞にも輝いています。また、ホームセンター業界のトップを走るカインズの依頼を受けて同社の店舗をプロデュースし、出資も受けている注目企業です。
同社 CEOの山田岳人さんにお話を伺う第2回目は、自社事業とマーケティングについてです。
買い物とDIYの2つを同時に叶えてくれるECサイト「DIY FACTRY」を運営する大都は、もともとは大阪に本社を持つ工具の卸問屋でしたが、2002年にいち早く工具のEC事業をスタートし、外部のE Cサイトにも出店して急成長。その後もDIYの流れに着目し、コロナ禍の2020年には「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」の「ガーデン・DIYジャンル」の大賞にも輝いています。また、ホームセンター業界のトップを走るカインズの依頼を受けて同社の店舗をプロデュースし、出資も受けている注目企業です。
同社 CEOの山田岳人さんにお話を伺う第2回目は、自社事業とマーケティングについてです。
体験を強化し競合に差をつける
2004年にEC事業に専任のスタッフを付けて以降、昨年同月比を継続して上回り続けていた売上が、2009年にはじめて割り込むことになります。時代とともに工具ECの同業者が増えていたのです。そこで中国にデータセンターをつくり、取り扱いアイテムを10倍にして圧倒的な品揃えを実現し、再度売上を伸ばします。この時に中国で出会った人が、今のCTO(最高技術責任者)だそうです。
しかし2014年に再度、昨対比を割ることになります。それまでは本などの販売がメインだったAmazonが本以外の商品を強化したためです。
ちょうどその頃、ある社員の「自分たちは何のためにこの仕事をやっているんですかね」という一言に、はっと気付かされます。そして自社のミッション、ビジョン、コアバリューを決めるという決断に至りました。
以前、取材させて頂いた中川政七商店会長の中川政七さんも、おひとりで会社のビジョンを決めたと仰っていました。やはり企業のビジョンはトップが決めるべきものなのかもしれません。
投資して次のステージへと、DIYという体験に軸足を移すのですが、なぜそう決めたのかと言うと、それは常に欧米企業をベンチマークしていて、アメリカで流行りつつあるDIYが必ず日本で必要とされる時が来ると確信したからだそうです。
とはいえ、当時の日本では未だマイノリティだったDIY。どうやって人々に認知させ、行動に結び付けていくのかが課題でした。
そこで考えたのが、色んなメーカーの工具を試すことができるお店をつくることです。洋服は試着できるのに、工具は購入してからでないと試すことができません。特に、今まで使ったことのない人にとっては、工具こそ体験してみることが大事なのではないか、それができれば、その体験が拡散され、メディアにも取り上げられるようになるのではないかと考えたそうです。
しかし、大都としてお店を構えると賃料の支払いが必要となります。その時、誰かが話していた「クラウドファンディング」で誰かに夢を応援してもらい、誰かに投資をしてもらうことができないかと考えます。
これをメーカーの立場から考えるとどうか。ホームセンターに置くものはホームセンターが決めるけど、メーカーが自分たちの好きな商品を置くことができる場が必要とされているのではないか。メーカーの課題である、棚が取れない、お客さまが体験できないという課題を解消できるのなら、メーカーがお金を出してでも出店してくれるのではないかと。
すると、その戦略が見事に当たりました。お店の小割スペースに、複数のメーカーが賃料を支払って出店してくれたのです。それによって、大都が支払う賃料がまかなえるようになります。つまり、情報を届けたい人がお金を払って情報誌に掲載し、それを情報が欲しい人に売るという、まさにリクルートのビジネスモデルだと気付きます。
「ドットコムからファクトリーへ」。売ることを主軸にしていないお店、どこか最新テクノロジーを体感できる米国サンフランシスコ発のb8ta(ベータ)に似ています。
メーカーにとっては出店料も安く、社員を張り付ける必要もなく、そして大都の社員に商品の教育をすればするほど、大都の社員がお客さまに上手く伝えてくれて宣伝にもなるという仕組みです。これも、赤字にならない手がないか考えて、諦めなかったからなのではないでしょうか。