ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #36
あるローソンを繰返し視察する理由:場に合わせる店、場をつくる店①
2021/06/10
新たなテクノロジーが次々とリテール領域に導入されています。本コラムでは、そうした国内外のニュースから可能なものは自ら体験しつつ、今後のリテールのあるべき姿と未来像を紹介しています。
筆者は、日常的に店舗視察を行っています。それは、当連載で多く取り上げるような海外や日本の革新的な店舗以外のほうが多いです。今回から数回は、そうした店舗について「場に合わせる店、場をつくる店」というテーマで書いていきましょう。
筆者は、日常的に店舗視察を行っています。それは、当連載で多く取り上げるような海外や日本の革新的な店舗以外のほうが多いです。今回から数回は、そうした店舗について「場に合わせる店、場をつくる店」というテーマで書いていきましょう。
ヘルスケアローソン「久が原一丁目店」が注目な理由
筆者は、これまでローソンの「久が原一丁目店」を6回訪店しています。このお店は、もともとは通常のローソンではなく、ナチュラルローソンという業態で出店していた店舗です。
ナチュラルローソンは、健康志向の商品を扱う店舗で、玉塚・元会長が2013年に5年間で3000店舗体制という目標を掲げたにも関わらず、2019年8月時点で直営24店舗、加盟店119店舗と、ローソン全体の1%程度に留まっています。
参考:ローソン 店舗の状況
「久が原一丁目店」は、2013年に薬剤師と健康機器も設置した「ヘルスケアローソン」として再出発しました。「マチの健康ステーション」を掲げた旗艦店だったわけです。
参考:健康を応援するローソン オープン
当時、革新的な取り組みが多数あり、注目を集めました。しかしながら、駅から遠いこともあり、視察した人は少ないのではないかと思います。筆者は2013年と、その1年後の2014年にも視察しましたので、当時と現在の結果を踏まえて考察したいと思います。
1.NB(ナショナルブランド)メーカーとの協業
NBメーカーに、専用商品陳列スペースで、健康志向に合わせた商品の実験販売を行ってもらい、Pontaの購買データを商品開発に活かす。
2.健康にこだわった商品を揃える
定番PB(プライベートブランド)であるブランパンなどが生まれて一定の成果をあげたものと考えます。今でも、このような店舗で実験販売したものがローソンで全国販売されるという流れがあると考えられます。ちなみに競合のセブン-イレブンの登戸店も、そういった店舗であると認識して定点観測しています。
3.野菜販売の強化
健康にこだわった店舗ということで、大地を守る会(現オイシックス・ラ・大地)と業務提携し、野菜販売するという取組みを行っていました。
1年後縮小されていましたので、期限の短い高級野菜を日販50万円のコンビニで扱う難しさを当時、感じました。
4.ICTを活用したOTC医薬品販売
「サポートツールとして薬剤師に24時間相談可能なテレビ電話を設置」ということでしたが、1年後の機器の状況を見ると使われていないのは明白でした。現在、薬剤師もテレビ電話も存在しません。
一方、第2類以下のOTC医薬品は継続して取り扱いされており、2021年2月には、ウーバーイーツで購入可能ということで、薬剤師界隈では話題になりました。
参考:ウーバー 大衆薬配送 ローソンの都内3店舗
5.タニタの業務用体組成計設置
「タニタのフェリカ搭載の歩数計をお持ちのお客さまは、店頭マルチメディア端末Loppiで、歩数と体組成計で計測した身体データの記録が可能」という取組みでしたが、1年後、訪店してみると、健康機器の多くは電源を切られて店舗の隅にありました。そして、現在は存在しません。
ドラッグストアに健康機器を設置しても思ったよりも利用が増えないということが良くあるので、これは想定の範囲内でした。