リテールの未来を創造する #01
WeChatPayアジア責任者が語る、日本でモバイル決済が普及しない理由【オイシックス・ラ・大地 奥谷孝司 × テンセント馬遥】
政府の存在がサービスへの信頼感を醸成
奥谷 なるほど、中国全土に普及できたのは、まず個人間の送金に焦点を当てて、その上で優れたマーケティング戦略を組み立てたからですね。一方で日本の場合、各社が様々な取り組みをするものの、なかなかモバイル決済が普及しません。その原因のひとつには、新しいサービスの使用への不安があると思います。中国では、そうした不安はなかったのでしょうか。
馬 それは少し“トリッキーな質問”かもしれません。そもそもクレジットカード自体が、中国では若い産業です。さらに新しいプロダクトだからといって、リスクを感じる必要はありません。
その理由は中国政府がリスクも含めて、全てをマネジメントしているからです。中国には政府という大きな守護神がいます。そのため、金融サービスでハイリスクに直面することもなく、セキュリティを心配する必要もないのです。
奥谷 政府の存在が、新サービスが普及する土壌になっていたのですね。
馬 はい。現在、政府は全ての産業に対して、新しいインスピレーションを求めており、私たちの取り組みも応援してくれるのです。
日本でモバイル決済が普及しない理由
奥谷 日本では、なぜモバイル決済が浸透しないのでしょうか。日本では現金決済のほか、クレジットカード決済やSuicaといった交通系マネーなど、多様な決済手段が存在することも理由かもしれません。馬 奥谷さんがおっしゃるように、複数の選択肢があることも理由のひとつでしょう。そして、決済に対する古い習慣があるのかもしれません。
しかし最も重要な理由は、日本にWeChatPayのようなプラットフォームが存在しないことだと思います。
奥谷 日本ではLINEもモバイル決済をスタートさせていますよね。
馬 確かにそうですが、WeChatPayは他社サービスよりもオープンだと思います。私たちはパートナー企業とAPIを共有し、それらを二次開発する権限を与えています。そのための費用も要りません。完全にオープンなのです。
パートナー企業が、私たちテンセントを驚かせる魅力的なサービスを開発する事例も出てきています。つまり、パートナーに多くの権限を付与していることが大切なのです。
奥谷 それは重要なポイントですね。一般的に日本企業は顧客を囲い込むために、独自システムにこだわる傾向が強いです。日本でモバイル決済を普及させるためには、APIやシステム使用料を無料化して、プラットフォームをオープンにしなければいけませんね。
<続き「WeChatPayは単なる決済手段ではなく、マーケティングツールである」はこちら。>
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