関西発・地方創生とマーケティング #31前編

古い日本家屋を人気ホテルに。リソースをデジタルで繋いで地方を活性化 NOTE代表 藤原岳史

 

プロモーションは新聞から


 実際に私自身がNIPPONIAの宿に泊まって思ったのは、泊まることと、その町の散策という2つの楽しみがあると満足度は高まるということです。人にとって、目的が2つあることが、その場所に行く動機づけになる。そういうものなのだと思います。

 では、その魅力をどうやって伝えるのか。藤原さんの前職がIT業界だったということもあり、デジタルをフルに活かしてプロモーションされているのかと思いましたが、意外にも最初は紙媒体、特に新聞に注力していたそうです。というのは、NOTEの活動には社会性があるので、広告としてではなく記事(パブリシティ)として取り上げてもらうことでその意義がより伝わると考えたからだそうです。

 さらに新聞であれば、きちんと裏取りがされているので信憑性があり、そこからテレビや雑誌・専門誌、Webメディア等への掲載に繋がっていきます。そして、最終的にはSNSを通じて、それぞれのユーザーが自分の意思をもって発信・拡散していく。
 前述の「バラバラなリソースをデジタルで繋ぎたい」という思いの中には、様々な紙媒体からデジタル媒体まで、分散しているメディアをNIPPONIA事業を通じて繋げるといったパブリシティ戦略もあるのだと言います。
 
NIPPONIAウェブサイト
 NIPPONAのWebサイト、ご覧になってみていかがでしょうか。「何となく良いな」と思いませんか。人はみな、そうロジカルにものごとを考えているわけではないからこそ、「何となく良い」と思ってもらえることが大事なのではないかと思います。

 以前、インタビューさせてもらったダイキン工業の片山義丈さんが仰っていた「何となく良さそうという妄想、つまりブランディング」。まさに、宿泊業界は玉石混交なので、余程尖ったコンセプトでターゲットを絞り込まない限り、この「何となく良さそうという妄想」を持たせることが大事だという気がします。そして、それらを伝える側としては当然、なぜ良いのかをきちんと分かっていなければなりません。

 ところで、皆さんはWebサイトの制作会社をどう選んでいますか。知り合い、あるいはそこからの紹介、たまたま営業があったから、以前からのお付き合い、同業が良いサイトなので同じところなど、入り口は様々ですが、最終判断はどうでしょうか。

 藤原さんは、綺麗なものをつくることができるという技術の有無だけではなく、自分たちの想いに共感してもらえるかどうかを重視するそうです。「たとえば、会ってみて何か違うと感じたらそれはやめるべき。つまり、アウトプットだけで判断するのではなく、どういう考えで仕事をする人なのか、その過程が大事だ」と言います。これについては、私もそう思います。

 以上、藤原さんがNIPPONIAのビジネスモデルを確立し運営されている背景には、ご自身が以前デジタル関連企業に在籍していたことから、様々な場所にいる人たちのそれぞれのスキルを、デジタルで繋ぐことが出来るのではないかと気づいたこと、そして出身地である兵庫県の丹波篠山に入り込んで街の人たちの声を聴き、一緒になって取り組んできたことがあるのだと思います。

※後編「NIPPONIAに泊まる目的をつくる NOTE代表藤原岳史」に続く
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