リテールの未来を創造する #03

インバウンド購入客数 前年同期比50%増、ドン・キホーテの決済戦略とインフルエンサー施策

インフルエンサーマーケティングを強化

 決済インフラの次の課題は、中国であまり知名度がないドン・キホーテをいかに知ってもらうかだ。

 2016年12月、アリババとAlipayがオフライン店舗を対象に実施するキャンペーン「ダブル12」に日本で初めて参加。その期間中は、Alipayユーザーが日本に到着した時点でドン・キホーテのキャンペーン情報をプッシュ通知。これによって、観光客はドン・キホーテを認知し、そこでAlipayが使えることを知る。

 「旅行先の店舗情報はたくさんありますが、実際はどこへ行けばいいのか観光客にはわかりません。そうしたお客さまに店舗名やAlipayと言ったキーワードを知ってもらうことは重要です。そこから、さらにキーワードを拡散させるために取り組んだのが、インフルエンサーマーケティングでした」(陳氏)

ドン・キホーテ
majica Premium Global
グローバルデジタルマーケティング責任者
陳 超 氏
グローバル領域における、諸チャンネル、サービス、CRM、ビジネスなどの開拓をしている。特にオンライン/オフラインを融合したトリプルメディアに関るECサイト、SNSや、外部のメディア、ペイメント等々に力を入れている。

 陳氏は、国内外から40人のインフルエンサーをキャンペーンに招待。インフルエンサーには、中国版ツイッター「Wibo(ウエイボー)」やライブ配信「イチョクハ」などのプラットホームを使って、来店して商品を購入したり、使用したりしている様子を記事や動画で紹介してもらった。

 また、売上高など数字のKPIはあえて設定せず、インフレーションとエンゲージメントの追求を目的に定めたという。

 「ポイントは我われが伝えたいキーワードを"面白く"伝えてもらうことです。インフルエンサーのファンは、彼女・彼らが配信する内容に関心が高いため、キーワードを覚えてもらいやすく、効果が上がります。検索エンジンでキーワードを検索して、ドン・キホーテのグローバルECサイトに流入してくれるので、そこから来店につなげています」

 陳氏は、「AlipayやWeChatPayの導入は顧客の利便性を高めただけではなかった」と言う。Alipayの導入で、それまでのPOSデータでは把握しにくかった訪日外国人数のデータの精度が各段に上がった。WeChatPayも同じだ。
 
モバイル決済を利用する中国の消費者。
 ドン・キホーテでWeChatPayを使った顧客には、微信のドン・キホーテ公式アカウントを通じて、新製品情報などを届けたり、顧客の質問に答えたり、インタラクティブなコミュニケーションができる。そこでエンゲージメントが獲得できれば、リピーターの醸成や口コミによる新規顧客獲得の効果も期待できる。

 陳氏は言う。

 「利便性は優位性に直結します。それは中国人の"気質"が大いに関係していると思います。中国人は並ぶこと、待たされること、面倒くさいことが嫌いです。ですから、現地には現金決済の有人レジはほとんどありません。小さな個人商店でもデジタルシフトは進んでいます。

 中国の人々は、購入に踏み切る前に、この商品は信頼できるのか、評判はどうなのか、調べたいという思いが強い。そういう情報はデジタルなら簡単に集まります。こうした事情もあって中国でデジタル化が進んだのだと思います。我々リテールが取り組むべきことは、利便性の向上と、その商品やサービスを購入したらどういう体験ができるのか、ライフスタイルをイメージできるようにしてあげることです」
 

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