関西発・地方創生とマーケティング #32前編

「おもろいことをやろう!」が人の暮らしを豊かにする、大阪発突っ張り棒の会社・平安伸銅工業の挑戦

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 突っ張り棒やDIYパーツシリーズ「LABRICO」など、収納にかかわる生活雑貨メーカー・平安伸銅工業の社長である竹内香予子さん。京都の大学を卒業したのち産経新聞で記者として働き、その後3代目として家業を継いだそうです。同社は創業当初はアルミサッシを、次に突っ張り棒を取り扱いました。竹内さんは、その突っ張り棒を「長く愛される定番品にしたい」と活動していらっしゃいます。

 先日、私がいつも見ているテレビ番組「カンブリア宮殿」に出演されていました。話は突っ張り棒を使った部屋の収納術から始まり、『ツッパリ嬢』のポスターといったユニークなプロモーション施策など、いつの間にか「これ、おもろい!」と引き込まれました。番組を見ながら共通の知人の存在に気づき、その人を頼って取材を打診すると数時間後には返事が来ました。その知人もさることながら、即断で受けてくださるスピード感も同社の強みなのではないかと思います。

 緊急事態宣言が開けて、ようやくオフィスを訪問する機会がきました。社名のごとく歴史のありそうなビルのエレベーターの扉が開くと、そこにはとてもいい雰囲気の空間が広がっていました。そんなオフィスで、今回は竹内さんに情報発信や事業承継について伺いました。
   

「おもろいの実現」が叶えた「ツッパリ嬢」見参

   
 竹内さんご自身の強みは、「おもろいことを見つける」、「一緒に実現してくれる仲間を巻き込む」ことだそうです。それが唯一、自分が社会の役に立てることであり、強みだと言います。

 時には、から回りしてしまうこともあるそうですが、実はきちんと自分の役割を意識していて、周囲から何を期待されているのかを気にしています。そういう性分を表すように、冒頭の写真にある『ツッパリ嬢』に登場している女性は、実は竹内さんご自身なのだそうです。それにしても素晴らしい、そして面白いクリエイティブだと思いませんか。
  

 『ツッパリ嬢』の企画は、竹内さんがトークイベント「TEDx 」に登壇した際に知り合った電通関西支社のコピーライターさんと意気投合し、「なんか、おもろいことやろう」というノリで始まったそうです。「一流は凄い、その発想にびっくりした」と、竹内さんはお話しされました。
   

商品に注目を集めるメディアリレーションのコツ

 竹内さんは学生時代、メディアの勉強をしていて、はじめは情報の上流である世論、流行をつくる側に回りたいと考えていたのですが、中国に留学した際にその考えが変わったと言います。その時、現地で目の当たりにした反日運動をきっかけに報道に興味を持ち、社会問題を解決したいと、世の中の森羅万象のリアルを伝えるため新聞記者になります。
   
平安伸銅工業社長 竹内香予子氏
    
 その経験があるからこそ、メディアに記事として掲載されるコツが分かるといいます。そのコツは、「どれだけニュース性があるのか」に尽きるそうで、もちろん宣伝要素が多いものはダメだと判断されますし、読者だけではなくメディア自体も喜ぶものでなければなりません。

 そもそも、「ニュース性がある」とはどういうことなのでしょう。2つ例を挙げてくださいました。ひとつ目は、事業承継が話題になった時の、竹内さんご自身の後継者としての活躍です。そして2つ目は、数年前にアベノミクスで「女性活躍」という政策が発表された時の、女性の再就職を応援する活動についてでした。

 前者の事業承継については、後継者不足で廃業する会社が多いという社会課題に対して、竹内さんが後継者として活躍しているという、既にある事実を伝えるということを指します。一方で後者の女性活躍については、その政策が出てすぐに女性の再就職を応援するという活動を新たにはじめ、リリース直後から取材に繋げるという結果を残しました。竹内さんいわく、「メディアはその政策に助成金が付くとなれば、それがきちんと活かされているのかどうか、その事例を報道したいと思うもの」だと。

世の流れであり、また竹内さんが女性であるとはいうものの、やはり冒頭に記載したように、スピードとその実行力が同社やご自身の強みなのではないかと思います。

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