関西発・地方創生とマーケティング #32前編

「おもろいことをやろう!」が人の暮らしを豊かにする、大阪発突っ張り棒の会社・平安伸銅工業の挑戦

業界No.1だからこそできる、動画チャンネル「つっぱり棒研究所」


 このように、時流をとらえて積極的にPRする一方で、自社でもできることとして「つっぱり棒研究所」というYouTubeチャンネルをスタートし、他社商品を含めた突っ張り棒の活用術や正しい知識を配信されています。他社商品を含めて紹介できるのは、業界No.1の企業だからこそだと言えます。以前取材した靴下専門店「タビオ」の越智勝寛社長も「経営に必要なのは、商業ではなく産業」と仰っていたことを思い出しました。

 私も話を聞くうちに、さらに平安伸銅工業という会社に興味を持ち自社の強みについてより深く伺ってみました。すると、一貫性、すなわち時代に合わせて、アイデアと技術でお客さまの豊かな暮らしを実現する道具をつくり続けてきたことが存在価値だとおっしゃいました。

 時代が変わると、その時に扱っている商品にかかわらず、ドラスティックに商品自体を変える必要があると言います。つまり、事業としてかかわるのは商品そのものではなく、暮らしを支える存在になる商品を提供するということだというのです。扱う商品がアルミサッシから突っ張り棒に変わっても、豊かな暮らしを実現する道具という点では一貫性があります。そしてどちらも固有名詞や一般名称になるほどに、暮らしの定番商品として浸透しています。竹内さんの代では、既存事業の強みを生かしながら新しいジャンルの開拓で社会に貢献していきたいと考えているそうです。
 

事業承継はリノベーション?

 家業の話をするとき、友人から突っ張り棒について「便利やけど、あのダサさなんとかならんの?」といわれたことがあるそうです。
 
 それでも、竹内さんは「ブランド力が弱くてさえない会社に見えるけれど、長く続いていることには意味がある。そして問屋だけではなくエンドユーザーからの、長い間に積み重ねてきた信頼がある。信頼という目に見えない価値は、後継者がゼロから積み上げても簡単に積み上がるものではない」と言います。

 事業承継は建物のリノベーションと同じで、もともとあるいいところを残し、時代遅れなところを直していきます。過去から積み上げてきた文脈のなかで一定の制約はあるものの、事業を承継することにはメリットもあり、デメリットもあるのだと。
   
突っ張り棒
      
DRAW A LINE(ドローアライン)
     
 さて、後編では同社の転機となったヒット商品「DRAW A LINE(ドローアライン)」と「LABRICO(ラブリコ)」の誕生経緯についてお話しいただきます。

※後編「組織の転機は意外なきっかけから、「関西の突っ張り棒メーカー」を経営する女性経営者の奮闘」に続く
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