関西発・地方創生とマーケティング #32後編
組織の転機は意外なきっかけから、「関西の突っ張り棒メーカー」を経営する女性経営者の奮闘
2021/12/27
突っ張り棒やDIYパーツシリーズ「LABRICO」など、収納にかかわる生活雑貨メーカー・平安伸銅工業の社長である竹内香予子さん。京都の大学を卒業したのち産経新聞で記者として働き、その後3代目として家業を継ぎました。突っ張り棒を「長く愛される定番品にしたい」と活動していらっしゃる竹内さん。前編に続いて、竹内さんに平安伸銅工業の転機となったヒット商品「DRAW A LINE(ドローアライン)」と「LABRICO(ラブリコ)」の誕生経緯について伺いたいと思います。(前編はこちら)
新規事業が生まれない社内体制
竹内さんが家業として平安伸銅工業を継いだ時、会社は売上が伸びず、その維持に終始している状況で、入社して初めてその経営の危うさを目の当たりにしたそうです。そこで、突っ張り棒で培った技術を使って、新規事業を立ち上げようとプロジェクトチームを組成します。若手の技術者に声をかけ、一緒に事業開発のセミナーも受講しました。しかし出てきたアイデアは既存事業の延長線上のものばかりで、突っ張り棒に次ぐ柱になるようなアイデアは出てきませんでした。
何故うまくいかないのか考えたときに、構造を考えるエンジニアに新規事業を提案してもらうのは役割が違う、そもそも社内に事業開発を担当する部署や経験の蓄積がないことに気づきます。
ものづくりの限界から気づいたこと
「ものづくりはもう終わりなのではないか」、そう思うこともあったそうです。ただ、平安伸銅工業には、お客さまの生活を豊かにするためならその手段を柔軟に変えられるという文化があると信じ続けた竹内さん。だからこそ、ものづくりにかかわらず、そのノウハウを提供することも会社の存在意義としてあるのではないかと思いはじめました。それがきっかけとなり、数年前にお片付けをテーマにしたブログメディアを立ち上げられたそうです。でも、そのメディア事業は結果として譲渡することになりました。というのも、ものづくりはスケールするけど、メディア事業は収益化が難<しく、3年で成果が出なければやめると決めていたからだと。
ところが、メディア事業で得た経験がものづくりに生きていきます。金型などの先行投資が必要なものづくりの業界では一般的でなかった、アジャイル型の開発スタイルをものづくりに応用することで、アイデアの発見やブラッシュアップのスピードを高め、成功の確率を高められる可能性があると気づきます。