関西発・地方創生とマーケティング #33

人はなぜ物を書き、想いを伝え続けるのか

前回の記事:
組織の転機は意外なきっかけから、「関西の突っ張り棒メーカー」を経営する女性経営者の奮闘
    

「言葉」を巧みに操る人の思考

 夜、何気なくTwitterを見ていると、JX通信社のマーケターである松本健太郎さんのアジェンダノートの連載記事が流れてきました。松本さんの記事はとても読みやすく、いつも楽しみにしているのですが、タイトルが「ビジネスパーソンが『有名になる』ことに、どれだけの意味があるの?」と刺激的で、「これは記事にするには勇気がいるテーマだぞ」と思いました。今回は、この松本さんの記事に触発されて「書く」というテーマについて私なりの思いを綴ってみたいと思います。

 先日、とある編集者にこの話をしたところ、「せっかくなら松本さんに会ってみたらどうですか」と紹介してもらうことになり、実際にお会いしました。そして実際に会ってみた松本さんの第1印象は、「意外と若い人なんだな」でした。

 どうしてそう感じたのか。ひとつはプロフィール写真、もうひとつは書かれている文章から受けた印象です。松本さんの文章はなぜ読みやすく面白いのか。それは、例え話が上手いこと、そして引用文献の多さが理由ではないかと思います。私は単にそれだけで「松本さんはそこそこの人生経験を積んだ人なのだろう。それに顔写真もそんな感じだし(笑)」と思い込んでいたのです。でも実はこれ、松本さんが著書「人は悪魔に熱狂する」でも書いている認知バイアスそのものですよね。

 ちなみに、松本さんが例え話をする理由は、具体と抽象を行き来するほうが、読者にとって分かりやすいからだそうです。私もいざこうして文字にしてみて、「具体と抽象を行き来する」とはどういうことなのかと、改めて自分なりに整理してみることにしました。 
         

 抽象とは「多くの物や事柄や具体的な概念から、それらの範囲の全部に共通な属性を抜き出し、これを一般的な概念としてとらえること」と辞書にあります。つまり、抽象化していくと、その物事についての本質が見えてくるのです。一方で具体とは、「抽象的な事柄を実際に形にして表すこと」とあります。

 松本さんは実際にお会いしたときもAという具体的な話をした時に、私の頭の周りに「?」が飛んでいるのを察知すると、分かりやすくBという別の例えに置き換えて説明してくれました。この時、私のなかではAからBへと話が置き換わっているのですが、松本さんの頭のなかでは一旦Aの本質な部分へ思考が移って、それをBという別の話に置き換えているのだと思います。ここのところについては、またいつか松本さんに聞いてみたいと思います。

 さらに、松本さんから話を聞いて面白いと感じたのは、冒頭の記事について直接の面識がない、とある有名なビジネスパーソンから喝采のメッセージをもらったという話でした。有名な人のなかにも、いや有名だからこそ「有名になることに意味があるわけではない」という本質的なことが分かっているのかもしれません。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録