人はなぜ物を書き、想いを伝え続けるのか
2022/02/02
私が書くこと、伝えることを続ける理由
ところで私には、何冊も本を執筆されている松本さんのように、文章を上手く書くことはできません。ただ、アジェンダノートで執筆を続けていることもあって、少なくとも「書く」という行為については意識しています。
2018年、アジェンダノートがスタートしたとき、執筆者が集まるパーティーがありました。その時に参加された皆さんに「なぜ書くのか?」を聞こうとしたのですが、ある人から「それは聞いては、いけないんじゃないか」と言われたことを未だに覚えています。ようは「有名になるために書いている人もいるからだ」と。もちろん有名になることだけが目的ではないとは思いますが、そんな経験もあって、私も松本さんの記事に惹かれたのかもしれません。
ところでなぜ、その時そんな質問をしようと思ったのか。私は当時、いや未だに「書くこと」についてかなりの時間をかけているからです。だから他の方も同様になかなか大変だろうに、どうしてそんなに労力をかけてまで書くのか、単純にそう思ったのです。
ではなぜ、私が書き続けているのか、偶然にも前回の私の記事でお話を伺った平安伸銅工業の竹内社長からも同様の質問を頂きました。「なぜ近鉄グループという企業で仕事をしながら、いろんな人に話を聞いて書くという活動をしているのか」と。
その時の私の答えは、「さまざまなメディア、特にテレビにも出演されるような人をビジネスタイムに1時間以上にわたって拘束できるから」です。もちろん拘束すること自体が目的なのではなく、自分が知りたいことを聞く、そして願わくはそれを記事として共有することで読者にも何かを感じてもらえるかもしれないからです。
あくまで「取材」だから会えるのであって、決して私が個人的に興味をもっているから時間をもらえるわけではないのです。それが、私が「書く」理由のひとつです。
そして、経営者の考え方やその表現を少しでも皆さんに伝えられるように整理するために、インタビューした内容を咀嚼します。その過程でそれまで他の方に伺った話と結びついていくことがあります。さらに、それを自身の言葉として文字にすることによって、頭の整理になって定着し、結果としてそれらは必ず本業にも役立つのです。これも「書く」理由のひとつになります。
普段、一緒にいる人たちとのコミュニケーションはもちろん大切ですが、それ以外の人の話を聞いて、それを文章にするというのはとても有意義なことです。そして、それがビジネスにおいて成功されている人の話なら尚更のことです。
松本さんを紹介してくれた編集者が話していたのですが、長く文章に関わる仕事をしているなかで、さまざまなシーンで物事を進めやすくなったそうです。言い換えれば、以前よりも人に理解してもらったり、納得して動いてもらえるようになってきた、と。
確かに自分自身に置き換えてみても、頭で考えたことをそのまま口にするのではなく、一旦文字にして、それを改めて自分の目で見ると、矛盾や流れの悪さに気づきます。そして、それを直すという行為を繰り返すうちに、頭で考えるときにも論理的に流れ良く、そしてそれを口に出して言葉にするときも、少しはうまく話せるようになる気がします。
たとえば、改まった場で話をするときも、はじめはそのための読み文を書いていたのが、経験を積むうちに頭の中だけでシミュレーションができて、上手く話せるようになるというのに似ています。このように、書くという手間のかかることも、それによって得られるものは、それなりに大きいものがあるのだと思います。
さて、松本さんの記事から、随分と話が逸れましたが、「ビジネスパーソンが『有名になる』ことに、どれだけの意味があるの?」 という話、ひょっとしてある程度の数の人たちが感じていることかもしれません。でも、多くの人は有名になることに憧れていて、そしていつかは自分もそうなりたいと考えているのかもしれませんね。みなさんは、どう思いますか?
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