関西発・地方創生とマーケティング #04
鉄道会社のマーケティングに必要なことは、地方創生である【近畿日本鉄道 能川一太】
2018/08/29
- 地方創生,
通勤・通学収入から観光・レジャー事業へシフト
鉄道会社のビジネスモデルは、都市部から地方に向けて線路を敷いて、沿線に住宅地を開発し、その電車賃で稼ぐというものです。長らく通勤・通学利用で日銭が稼げていたため、いわゆるマーケテイングを意識している人は少ないな、と個人的には感じています。
しかし、今後さらに少子高齢化が進めば通勤・通学による収入が落ち込み、一方で電車を走らせるには固定費がかかるわけで、そこを補うためにインバウンドをはじめ観光・レジャー事業が大切になっていきます。
最近では、JR九州の「ななつ星in九州」や、JR東日本「TRAIN SUITE 四季島」などのクルーズトレインが人気です(鉄道会社に勤めているので、そう感じるのかもしれませんが)。
私が勤務する近鉄では、「しまかぜ」という観光特急を大阪、京都、名古屋から伊勢志摩方面へ運行しています。
これらは、目的地への交通手段である電車に「乗る」こと自体を目的として、さらには広告塔としての役割を担わせ、その結果、地方へと出かけさせることを狙った施策です。そして地方へ人が出かけることによって、その魅力が広まり、さらなる鉄道利用に繋がる。これは、一つのマーケテイングと言えるのかもしれません。
そう、地方が元気になることが、鉄道会社にとっても、とても大切なのです。
例えば、伊勢神宮の内宮前にある「おかげ横丁」。ここは伊勢の名物、赤福餅をつくっている企業が開発した、江戸時代の伊勢の様子を再現した町です。内宮へお参りする人は、ほぼ立ち寄るのではないでしょうか。
いやむしろ、おかげ横丁があるから、内宮へお参りするという人もいると聞きます。実際、おかげ横丁ができてから内宮の参拝者は増えたと言います。それだけ我われ近鉄電車の利用も増えるということですね。
私が以前、近鉄で宣伝を担当していたとき、女優の竹下景子さんや檀れいさんを起用したテレビCMや交通広告を「おかげ横丁」で撮影させてもらいました。赤福さんとしても近鉄の宣伝で露出するため、ある意味「winwin」な関係ですね。
では、次からは、地方の企業がどのようなマーケティング活動をしているのか、二つ例に挙げてみたいと思います。