ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #45

「新しいスーパーにカゴを持たないスーツの男性」 競合調査は、経営幹部の自己満足ではいけない

前回の記事:
なぜ眼鏡店のJINSは、異業態の「パン屋」を店舗に併設したのか
 

 1カ月でスーパーマーケット18店を訪問

 2021年6月に本連載の「あるローソンを繰返し視察する理由:場に合わせる店、場をつくる店① 」で指摘したように、マスコミは小売業の新業態をよく取り上げますが、数カ月立つと全く追いかけなくなります。

 そのため筆者は、気になる店舗は後日、再訪店するようにしています。私が各種講演・コラムで触れる店舗は、特に複数回訪問していることが多く、スーパーマーケットやドラッグストアに限らず、話題の店舗は可能な限り自分の目で見に行きます。また、関東圏の最寄り品の主要業態の代表的な店舗は、四半期に一度は見るようにしています。

 筆者がこの1カ月ほどの間に「行った」だけでなく、「買い物」もしたスーパーマーケットは以下の通りです。
 
■筆者訪問店
  • ライフ桜新町店(○)
  • ライフセントラルスクエア恵比寿ガーデンプレイス店(○)
  • B L A N D Eつくば並木店(○)
  • B L A N D E研究学園店(○)
  • ヤオコーF O R I S府中店(○)
  • イトーヨーカ堂M店
  • イオンスタイルS店
  • イオンスタイルA店
  • いなげや S店
  • オーケーみなとみらい店
  • オーケーI店
  • オーケーK店
  • オーケーM店
  • サミットN店
  • 東急ストアA店
  • マルエツN店
  • ロピアK店
  • ロピアN店

 このうち店舗名の後に○をつけた店は、視察・体験を主目的に出かけたものです。個人的にはマルエツやカスミを展開するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)の新業態である「BLANDE」に注目しています。

 また、業績好調なライフコーポレーションの新業態であり、最注力の店舗として話題の「ライフセントラルスクエア恵比寿ガーデンプレイス」については、スーパーマーケットにおける日用雑貨の取り扱い(4860SKUのうち約3000SKUは店頭陳列なし)は興味深く、別の機会があれば取り上げたいと考えています。

店の天井からぶら下がっている
中程度の精度で自動的に生成された説明
 

 なぜ多くの店舗を訪問するのか

 なぜ筆者がこれだけ店舗を訪問するのかというと、「ストアコンパリゾン(Store Comparison・ストコンと略すことが多い)」のためです。これを文字通りに受け取ると、自店舗と他店舗を調査比較する「競合店比較」の意味になりますが、それでは手段を示しているに過ぎません。

 あくまでもストアコンパリゾンの目的は、競合または異業種の経営戦略を理解して知見を得て、自社の経営戦略に活用して収益を上げることにあります。品揃え・価格といったその瞬間における対応策ではなく、中長期に影響する根本課題の発見に本質があるのです。論理の飛躍を防ぐために、少々細かく論じます。以下はAが手段で、Bが目的になります。
 
A:自店舗と他店舗を調査比較する
B:競合または異業種の経営戦略を理解し、知見を得る

A:競合または異業種の経営戦略を理解し、知見を得る
B:自社の経営戦略に活用し、収益を上げる

 最終目的は自社の収益向上にあります。したがって、質の高いストアコンパリゾンができるかどうかが収益という結果に繋がるわけです。

 多くの小売業においては、店長などが近隣の競合店舗の価格調査をすることをストアコンパリゾンと呼ぶことが多いですが、それが本来の最終目的に繋がっているのは、「Pricing(価格設定)」が経営上の最重要課題である一部企業だけです。

 多くは店長や本部経営層などの管理職の自己欺瞞もしくは、“仕事した感”を得るためであることが多いのです。。筆者が「ライフセントラルスクエア恵比寿ガーデンプレイス店」を視察した4月18日と4月22日には平日夕方にも関わらず、近隣住民に混じってスーツの男性(1~2割は女性)が数人連れで来店していました。彼らは商品と価格の話ばかりをしているので、同業他社であることが明白です。さらに、彼ら彼女らが同業他社だとひと目でわかる特徴があります。それは、「買い物かごを持っていない」ということです。

 スーパーマーケットの来店目的は、家庭の食材を調達することです。それはコンビニエンスストアで今の自分だけの小腹を満たす買い物とは違い、両掌で足りない量になることが多いです。したがって、買う気のある人は「買い物カゴ」を持ちます。大量に買う人はカートも使います。

 筆者は、顧客の立場に立たない視察には、何の意味もないと考えます。なぜならば「自社の経営戦略に活用し、収益を上げる」という最終目的を達成するためには、「顧客になぜ買っていただけるのか? 買っていただけないのか?」を知る必要があるからです。店内において、買い物かごを持たずに仲間同士で談笑し、買い物をしない彼ら彼女らが、それを知る日は来ないでしょう。

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