ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #46

超高齢社会の日本、イオンの試みからドラッグストアがショッピングセンターの中核になる可能性が見えた

前回の記事:
「新しいスーパーにカゴを持たないスーツの男性」 競合調査は、経営幹部の自己満足ではいけない
  6月16日に「デジタルサイネージ ジャパン(DSJ)2022」というイベントへの登壇があった関係で、数年ぶりに幕張メッセに行きました。せっかくの機会でしたので、幕張の小売店巡りを実施しました。今回は、そのレポートです。
 

「ウエルシア イオンタウン幕張西店」の独自性


イオンタウン幕張西(筆者撮影)

 日常生活に必要な機能を揃えた近隣型ショッピングセンターを「NSC(Neighborhood Shopping Center)」と呼びます。ショッピングセンターの中では、商圏距離が最も短い形態で、生活者の住居から近距離にあります。

「イオンタウン」はイオングループによるNSCディベロッパー事業であり、日本全国に151箇所ほど展開しています(2022年5月31日現在)。NSCの中核テナントは、購入頻度が多い食品を主とした食品スーパーマーケットであることが多いです。一方で、今回の「イオンタウン幕張西」は、中核テナントが食品スーパーマーケットではなく、ドラッグストアのウエルシアとなっていることが特徴です。

 イオングループの食品スーパーマーケットではなく、同グループのドラッグストアが中核テナントとなった理由は、他のテナントの影響と考えられます。今回のイオンタウンには2022年夏、約180床を有する病院棟「医療法人白百合会幕張病院」が開業するのです。そして2階にクリニックモールが入るため、必然的に調剤機能が収益の柱となります。病院側の入り口には園芸と並んで、調剤室があります。

 病院併設のショッピングセンターは、イオンとしても初めての取り組みですので、実際に目にすると、その注力具合が伺えます。調剤室前の待合室の入口には、お薬の受け取りロッカーがあったり、検体測定やオンライン服薬指導用のブースがあったりするのも特徴です。
 

充実の調剤機能、一方で「食料品」は?


 さて、食料品に関してはどうでしょうか。売り場を見たところ、弁当は近隣のオリジン弁当からの横持ち(自社拠点からの輸送)、惣菜はセイコーマートの商品もあり、私の想定とは違って充実していました。

 一方で、店内調理がないため、揚げ物・焼き物の種類は少なかったです。生鮮については、郊外型ドラッグストアの延長ですが、青果は千葉・船橋市場からの直送で、イオンの物流ではなく仲卸業者に配送してもらっているようです。

「イオンタウン幕張西」は、超高齢社会にある「日本型NSC」としてモデルとなるケースだと考えます。なお、その他のテナントの中では、晴れにも関わらずコインランドリーの利用客が一般的なNSCの中でも多かった印象です。病院の開院後は、機器が足りなくなるのではないかと感じました。

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