最新ニュースから読み解く、物流とマーケティング #13
ECで注文しても商品が届かなくなる未来。物流業界が抱える「2024年問題」とは?
2023/03/01
物流業界の「2024年問題」とは?
2024年4月1日からトラック・ドライバーの年間時間外労働の上限が960時間に設定される。若手のドライバー減少と高齢化による労働力不足の中、E C市場の急成長によって宅配便の個数が増加し、物流業界の長時間労働が常態化していたことに対する政策となる。
一見、物流業界がホワイト化するきっかけとなるように見えるが、これまでドライバーの残業で支えられてきたEC物流が滞る危険性が指摘されている。そこでこの問題に精通している流通経済大学の矢野裕児教授(流通情報学部 大学院 物流情報学研究科 物流科学研究所)に取材してみた。
高齢化しているトラック・ドライバーの現実
まず日本のトラック・ドライバーの実態から確認していきたい。トラック・ドライバーの年齢構成が2010年から2021年で、どのように推移しているかを矢野教授に尋ねてみた。
このグラフはトラック・ドライバーの年代別構成比を2010年と2021年で比較したものだ。青色が2010年で、オレンジ色が2021年になる。
若い20~30代が増えず、50~60代が増加し、高齢化が明らかに進んでいることがわかる。このまま若手が増加しなければ、10年後の2031年のEC配送は、50~60代が中心に担うことが予想される。
若い世代からトラック・ドライバーという仕事が敬遠されるのは、「3K(きつい、汚い、危険)」だからだ。最近では別の「新3K(きつい、帰れない、厳しい=給料が安い)」という言葉も生まれているが、それに当てはまるのがトラック・ドライバーになる。
今回の「年間時間外労働時間の上限設定」は、ドライバーの働く環境改善のために施行される。ただし、残業時間減による収入減が予想されるため、給料の引き上げも想定されている。
この法律の施行により、どれだけの労働時間が削減されるのだろうか。また現在、トラック・ドライバーの労働時間の中にどれだけの残業時間があり、そのうち何%の残業時間が上限を超えてしまうのだろうか。この辺りも矢野教授に聞いた。