関西発・地方創生とマーケティング #37前編

エスカレーターではなく、つい階段をのぼってしまう。消費者が行動したくなる「仕掛け」がマーケティングに使える【大阪大学大学院 松村真宏 教授】

前回の記事:
低アルコールのクラフトカクテル「koyoi」、マーケティングとロマンの掛け合わせで伸ばす【SEAM代表 石根友理恵氏】
 

マーケティングに通ずる仕掛学とは


 ピアノの鍵盤がデザインされた階段を子どもが面白がって歩くと音が鳴る。混雑していたエスカレーターの利用者が減り、隣の階段の利用者が増えるという動画がテレビで紹介されていて、「あ、これは面白いな」と思いました。
  
引用:ピアノの鍵盤がデザインされた階段

 他にも大阪駅の階段で、「アフター5に行くならどっち? 福島派 天満派」という寄り道したい街を選んでもらう人気投票が実施されていました。福島派は青、天満派は赤のペイントが階段に描かれていて、その結果をセンサーで計測してモニターで表示するという企画です。遊び心があって階段の利用者が増えたという大阪人にとって、“おもろい”仕掛けです。
  
天満派?福島派?(写真:松村真宏教授提供)

 人間の心理を利用した、マーケティングに通ずるような現象が気になって調べてみると、それを学問として研究している人がいました。大阪大学大学院 経済学研究科 教授の松村真宏さんです。書籍『仕掛学』や『松村式 子育て仕掛学』などを執筆されています。

 その書籍の中では、嗅覚を利用した仕掛の例として、私の元職場である近畿日本鉄道(近鉄)と西日本旅客鉄道(JR西日本)の駅である鶴橋について紹介されています。松村さんは学生時代に通学の乗り換え駅として鶴橋駅を利用していました。そのとき毎回、焼肉のいい匂いがするので、「鶴橋と言えば、焼肉」という強固な連想記憶が刷り込まれていて、今でも「焼肉を食べたい」と思ったときは、真っ先に鶴橋が思い起こされるそうです。松村さんとは、そんな共通の話題もあり、仕掛学は人の行動を変容させるマーケティングに通じる点があるのではないかと思い、お話を聞く機会を得ました。

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