関西発・地方創生とマーケティング #37前編

エスカレーターではなく、つい階段をのぼってしまう。消費者が行動したくなる「仕掛け」がマーケティングに使える【大阪大学大学院 松村真宏 教授】

 

アンダーマイニング効果


 2022年、私が勤める近鉄・都ホテルズでは、会員組織をリニューアルし、会員数を増やすためにアプリ入会ポイントキャンペーンを実施しました。このような企業が行う報酬を提供するプロモーション施策の是非について伺いました。

 報酬がもらえることが当たり前になってしまうと、貰えなくなってしまったときに、以前よりも購買動機が下がるそうです。報酬で行動すると、やめた瞬間に元のレベルよりも行動レベルが下がってしまいます。最初は「楽しいから」という内発的な動機づけで行動していたのに、報酬をもらうことによって行動の動機が外発的になってしまうのです。これを「アンダーマイニング効果」と言うそうです。

 また、「必ず貰えるキャンペーン」を継続的に行うのであればいいのですが、期間限定にすると、やめた途端に誰も買ってくれなくなります。企業が期間限定のキャンペーンを定期的に実施すると、消費者は「どうせまたやるだろうから、そのときに買えばいい」と購買を控えるようになります。以前に、ミスタードーナツが100円セールをやめられなかったのは、そういうことだと言われているそうです。

「もので釣る」のは、麻薬と一緒で危険です。金品ではなく体験的な喜びや名誉、楽しい、嬉しいという感情に働きかけると反動が起きにくいのです。そこを「どのようにコントロールするかが大事」と松村さんは言います。

 松村さんのお話を聞いて、マーケティングにも仕掛けを活用することができると実感しました。後編では、マーケティング業界で注目されているデータやDX、アイデアのつくり方について伺います。

※後編「データ偏重のマーケ業界に警鐘。データでは分からない消費者を「笑顔」にする大切なこと【大阪大学大学院 松村真宏 教授】」に続く
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