ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #54

米国・小売店の「最新AIレジカート」会員特典にリテールDXの未来を感じた

前回の記事:
北陸の地場スーパーがすごい。カジマートを見逃してはいけない、これだけの理由
 2023年9月、昨年に続き、米国・ニューヨークへ小売業の視察に行ってきました。定点観測している店や新たな取り組みをしている店を多数確認しました。今回はその中で最も「Wow!」と感じた体験について紹介します。
 

Instacart社傘下のAIレジカート


 店舗でのピックアップやデリバリーの代行業者として知られるInstacartという企業があります。このInstacart社は2021年10月、Caper AIというリアル店舗の会計を自動化する技術を開発するスタートアップ企業を約500億円で買収しました。

 筆者はCaper AI社が開発したAIレジカートの新バージョンが店舗に導入されたというニュースを聞き、実際に体験してきました。最初に導入されたのはCaper AI社があるニューヨーク州マンハッタンから南西に位置するニュージャージー州のスーパーマーケットであるShopRite Spotswood店です。
 
体験の様子(筆者撮影・編集)

 そのスーパーマーケットへは、ニューヨーク在住の友人に運転してもらって訪れました。米国のAIレジカートは、昨年Amazon Dash Cartを体験しました。今回の比較対象は、そのAmazon Dash Cartと日本のレジカートです。

 参考:連載第28回 Amazonの新サービス「Dash Cart」が、「Amazon Go」より普及する可能性がある理由
 

Amazon Dash Cartとの違い


 日本のスマートレジカートは、カートに付いているバーコードスキャナーで商品のバーコードを意識的にスキャンする必要がありますが、Amazon Dash CartやCaper Cart3はバーコードの位置を意識せずに買物が可能です。

 このカートには上部4方向にカメラと、エラー時に補足として使用されるタブレットの裏のカメラの計5台のカメラが装備されています。また、カートには重量センサーが付いており、商品のバーコードをスキャンした上で重量もチェックする仕組みとなっています。量り売りの商品も、その重量センサーで簡単に購入できます。
   
筆者撮影

 Amazon Dash Cartと似ていますが、Caper Cart3は後発なだけにやや軽量で、取り回しも少し良かったです。使用感としては、カートに商品を入れるとほぼ自動で認識され、商品を戻すと、それも自動で認識されて削除されるという非常に使い勝手の良いものでした。そして、同じ商品を複数回カートに入れた場合、Amazon Dash Cartではエラーが発生しましたが、Caper Cart3では正確に商品数が認識される点が印象的でした。

 エラーが発生した場合、撮影された画像が表示され、ユーザーに確認が求められます。このUIの使い勝手に関しては、同様の仕組みのAmazon Dash Cartのほうが優れていると感じました。ソフトウェアの作り込みはAmazonが一歩リードしている印象です。

 当然のことながら、Caper Cart3は会員カードとの連携も考慮しており、購買履歴やアプリでの買い物メモとの連携が可能です。さらに会員特典として、特定の購入額に達するとルーレットが回るという遊び心ある仕組みが取り入れ、購入意欲を高める工夫がなされています。

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