ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #55

日本のスーパーは出口付近がパン売場なのに、世界第4位小売企業が入口で67円プレッツエルを売る理由

前回の記事:
米国・小売店の「最新AIレジカート」会員特典にリテールDXの未来を感じた
 

日本のスーパーマーケットのパン売場


 スーパーマーケットでのパンの取り扱いは大きく分けて2通りあります。ドラッグストア同様に大手製パン企業へ発注して「店別納品」をする場合と、店内にオーブンなどのベーカリー設備を設置して焼きたてパンなどを提供する「ベーカリー」の場合です。一般に大型のスーパーマーケットではベーカリーを中心に、大手製パン企業商品も品揃えします。小型店ではベーカリーがないことが多くなります。

 今回はベーカリー(焼きたてパン売り場)の話です。日本のスーパーマーケットでは一般的に店舗の入口付近には果物や野菜といった青果が陳列されています。これには、諸説あります。最初に華やかな色合いの青果や切花を展開して買い物を楽しい気分にさせるという説と、献立を考える時に基本となる野菜から始めるという説があります。どちらも一理あると考えます。肉や魚と違い常温保存できるものがあるということも設計上の一要素でしょう。

 青果から、そのまま主通路である壁面沿いに鮮魚、精肉と生鮮3品が続き、最後に惣菜を経て、ベーカリーを通ってからレジというパターンが最も多いです。最後にパン売り場があるというのは、パンが軽く潰れやすい食材であるため、他の重い物を買った後に買い物カゴに入れるのが適切であるという考え方に基づいています。その他にも店舗設計上、水回りや防火、衛生管理の視点があります。
 

LiDL (リドル)について


  デロイト トーマツ社が発表した世界小売業ランキング2023の4位にドイツの非上場小売企業であるSchwarz Groupがランキングされています。傘下最大の小売チェーンブランドである食品中心のハードディスカウンター業態 LiDL (リドル)は31カ国で1万2200店舗以上を展開している巨大企業です。

 米国にも2017年に進出して、現在は東海岸中心に約170店舗を展開しています。なお、2022年3月に同業であるALDIのRoman Heini取締役が米LiDL会長に就任しています。筆者は昨年(2022年)、今年(2023年)の米国店舗視察において3店舗で買い物しました。
  
LiDL Elmwood Park NJ – Broadway店2023年9月:いずれも写真撮影(郡司 昇)

 LiDLはPB商品が9割近くをしめ、高品質低価格コンパクトな店舗で無駄を無くす経営方針です。頻繁に比較対象とされるALDIと非常に似た品揃え・値付け・ローコスト店舗オペレーションの店舗です。

 ある程度以上の大きさのPB商品にはパッケージの各面に長いバーコードを印刷しています。目的はレジを速く処理するためです。
  
LiDL Elmwood Park NJ – Broadway店2023年9月

 商品は自社規格の段ボールで納入されて、片面をカットするだけで陳列されています。さらに従業員・来店客の誰でもが分かるように色分けされています。これにより補充ミスが少なくなるし、見た目も統一されるわけです。
  
LiDL Harlem NY - Frederick Douglass Blvd店2023年9月

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