リテールメディアコンソーシアム #02

セブン-イレブン、サントリー、ネスレ日本、ライオン、電通コンサルティングが考えるリテールメディアの現在地【リテールメディアコンソーシアム座談会・前編】

前回の記事:
リテールメディアの研究組織「リテールメディアコンソーシアム」が始動、最新事例とその効果などを発信
 マーケティング専門Webメディアの「Agenda note」は2023年12月1日、リテールメディアの研究組織「リテールメディアコンソーシアム(Retail Media Consortium)」を設立した。本コンソーシアムは、リテールメディアのあり方を規定し、新たな基準を設定するプラットフォームとして機能することを目指す。そして、日本独自のリテールメディアを定義し、最新事例とその効果の発信などを通して、消費者に新しい価値を提供するリテールメディアの創出を目的とした取り組みとなる。

 今回、リテールメディアをテーマに、リテーラー、メーカー、広告会社でマーケティングやデジタル部門を管掌するサントリー 支社長 リテールAI推進チーム シニアリーダーの中村直人氏、ネスレ日本 常務執行役員 デジタル&Eコマース本部 本部長 兼 新規ビジネス開発部長の島川基氏、ライオン ビジネス開発センター エクスペリエンスデザイン部長の大村和顕氏、セブン-イレブン・ジャパン マーケティング本部 デジタルサービス部 兼 リテールメディア推進部 総括マネジャーの杉浦克樹氏、電通コンサルティング 代表取締役 社長執行役員/シニアパートナーの八木克全氏の5人が、現状の各社の取り組みや課題、日本と海外の違いなどを語り合う座談会を実施した。

 本稿ではその議論の様子を前編、中編、後編の3回でお届けする。前編では、リテールメディアの定義の曖昧さやコンバージョンの置き方、営業と広告宣伝の考え方の違いに基づく懸念点について議論した。
  
(左から)電通コンサルティング 八木克全氏、サントリー 中村直人氏、セブン-イレブン・ジャパン 杉浦克樹氏、ネスレ日本 島川基氏、ライオン 大村和顕氏
 
 

リテールメディアのコンバージョンはどこに置くべきか


八木 まずはリテールメディアのメリットから考えていきます。皆さんは、どのように考えていますか。

大村 広告を出稿するメーカー側からすると、リテーラーさんと組ませていただく一番のメリットはやはりデータだと思っています。我々ライオンは「Lidea (リディア) by LION」というオウンドメディアをもっていて、その中でお客さまの行動を分析しています。
 
ライオン ビジネス開発センター エクスペリエンスデザイン部長
大村 和顕 氏

 ライオン ビジネス開発センター エクスペリエンスデザイン部長。アイ・エム・ジェイにて、さまざまなナショナルクライアントのデジタル戦略策定およびWEB・アプリケーションの開発をプロデュースした後、2017年にライオンへ入社。2020年1月より各ブランドおよび新規ビジネスにおけるコミュニケーションの責任者として、ビジネス開発センター エクスペリエンスデザインを率いている。

しかし、それらのデータと最終的な購買データをなかなか紐づけられないんです。外部からデータを購入して紐づけようと試みていますが、データ量としては足りていないなと考えています。我々としては、リテールメディアに取り組むことでお客さまとデータを紐づけ、検証ができるようになることを期待しています。

杉浦 どなたに聞いても、この壁は大きいですね。我々セブン-イレブンなどリテール側が、商品の仕入れに関して相対するのはメーカーさんの営業担当の方々です。一方、リテールメディアとして、広告配信についてお話をする場面では、メーカーさんのマーケティング担当の方とお打ち合わせしたいという思いが強いです。ただ、そもそもいままでの関わりが少ないため、いきなりお会いするのも難しいという状況があります。

中村 その大元の課題には、「リテールメディアの最終コンバージョンとして目指すべき指標は何か?」という点が挙げられると考えています。広告だから「認知」なのか、小売・流通が入っているからは「購買」なのか。この捉え方の違いが、いまの縦割りな関係につながっていると思います。
 
サントリー 支社長 リテールAI推進チーム シニアリーダー
中村 直人 氏

 1992年入社、2011年営業推進本部、2020年広域営業本部第2支社長、2023年データ戦略部部長兼務。

島川 「最終コンバージョンとして目指すべき指標は何か?」を考えることは難しいですが、重要な議論のポイントだと思います。我々ネスレでは、現在議論されているリテールメディアを「リテールデジタルメディア」と定義付けています。

デジタルでデータを使うのは前提ですが、理想的にはプログラマティック・バイイング(データに基づいたリアルタイムな広告枠の自動買い付け)でなければ、リテールメディアとして捉えないということです。そうすることで購買としての効果検証にも、広告としての効果検証にも両立できます。

八木 投資対効果の測り方は難しいですよね。「購買」の中でもトライアルかリピート購入かで、メーカーさん側の管轄セクションも変わってくると思います。メーカーさんとリテーラーさんの両者とも、お客さまにいい商品を届けたいという「共通善」を持っているのに、営業部と広告宣伝部では、重点の置き方が違います。
 
電通コンサルティング 代表取締役 社長執行役員/シニアパートナー
八木 克全 氏

 京都大学、大学院で建築を専攻(工学研究科修士課程修了)。電通入社後、営業局、マーケティングコンサルティング局にて、デジタルサービスの開発/推進領域、大手企業のデジタル事業の開発/事業グロースを経験。2016年より電通デジタル設立に参画。DX(デジタルトランスフォーメーション)領域管掌の執行役員として、新規事業、サービス開発やトランスフォーメーションコンサルティングを推進。22年1月より現職。新規事業/サービス開発や変革支援を得意とする

リテーラーさんに向き合うメーカーの営業は、店頭に多くの商品を並べてお買い得な価格にしたほうが、お客さまが手に取ってくれると考えています。一方で、メーカーの広告宣伝部は「好きになる認知」を得ることのほうがリピート購買につながるから重要だと考えるんです。それぞれが投資すべきだと考える点が異なりますよね。

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