リテールメディアコンソーシアム #02

セブン-イレブン、サントリー、ネスレ日本、ライオン、電通コンサルティングが考えるリテールメディアの現在地【リテールメディアコンソーシアム座談会・前編】

 

メーカーとリテーラーは「取引」から「取り組み」へ


八木 定義でいうと、たとえばインストアでサイネージ広告を出した効果は、ある程度、位置データとPOSデータ分析で推定できますよね。また、チラシを読んだ人は、ID-POS分析でLTV(顧客生涯価値)が上がるという結果があったりします。皆さんは、リテールメディアをどのように定義されているのでしょうか。

島川 我々ネスレ日本のようにD2Cビジネスを持つ部門では、もちろんLTVは最も大事な指標です。ただ、オフラインも含めたオムニチャネルのビジネスでは、そもそも全チャネルでの購買をトラックするのは困難なためリテールメディアの広告前後を含めたLTVを可視化できるケースはまだ無いのではないでしょうか。

究極的にはそこを見なければ意味がないと思いますが、まだまだその手前な気がしますね。
  

中村 私は比較的と営業が長いので、リテールさんとの向き合いは理解しているほうだと思いますが、現場でのやり取りやコミュニケーションを「取引」から「取組」に変えないと、リテールメディアは成り立たないと思います。

「取引」は「モノ」が主語ですし、往々にしてメーカーの営業とリテールさんでは相容れづらい関係になりがちです。売りたい側と、より良い条件で買いたい側との間では、「価格」のみの議論になりやすいです。それを「取り組み」に変えていくと、「モノ」ではなく「ヒト」を主語にするので、そのカテゴリーやひとつのブランドをどう最大化していくかという話がしやすくなると思うんです。

杉浦 実は当社では、マーケターに支持されるという点にKPIを置いています。「取引」ではなく「取り組み」という意味で案件に向き合うことが、少しずつ増えていますね。ただ、現状の入り口はマーケティングよりも営業の方からのほうが多いです。

大村 まさに、中村さんのおっしゃる通りだと思いました。リテーラーさんはメーカーの営業と向き合うと、どうしてもコンバージョン(購買)を目指した取り組みになります。我々のような宣伝やマーケティング系の人間が入ることで、認知や興味関心を意識して、お客さまの態度変容を長期的に見ていく検証になっていきます。

これを「取り組み」として一緒に行っていくことで、よりリテールメディアの価値が上がるのではないでしょうか。私としては、リテールメディアの中でお客さまがどう行動して、どこで離脱しているのかを分析していきたいので、そこまでできるとリテールメディアで取り扱うボリュームが広がる可能性はあると思います。

※中編 日本の「リテールメディア」の実態と可能性とは?【リテールメディアコンソーシアム座談会・中編】 に続く
他の連載記事:
リテールメディアコンソーシアム の記事一覧

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録