関西発・地方創生とマーケティング #40前編

「靴下屋」タビオとDIY専門店・大都が実践、ビジネスをジャンプさせるクリエイティブな組織のつくり方 【ネプラス・ユー京都2024レポート】

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 2024年5月20日と21日に京都で初開催された「ネプラス・ユー京都2024」に参加しました。今回は私がモデレーターを務めた公式セッションについてお伝えしたいと思います。セッションのタイトルは「クリエイティブ・ジャンプを生む『おもろい』組織カルチャーとは」。

 いかにも東京の人が関西でつけそうなタイトルですが、以前、私がこの連載で取材させていただいたタビオ 代表取締役社長の越智勝寛さんと、大都 代表取締役の山田岳人さんにスピーカーとして来ていただきました。

 それぞれにユニークな思考法をお持ちの越智さんと山田さんが「クリエイティブ・ジャンプ」について語ったやり取りをメインに、私のコメントを挟みつつまとめました。まずは、お二人のご紹介です。
 

クリエイティブ・ジャンプとは何か


山田  大都の代表をしています。新卒でリクルートに入社して、6年くらい営業をしていたのですが、学生時代から付き合っていた彼女と結婚しようと、「娘さんをください」と言いに行ったら、「娘やるから会社を継げ」と言われて、リクルートを辞めて今の会社に入りました。

戦前、大阪の生野区で創業した、今年で87年になる会社です。経営者としては3代目で、義理の父親にあたる先代までは工具の問屋さんでした。大阪は工具の産地なので、産地問屋として色んなホームセンターとか、金物屋さんとか工具屋さんに卸していました。当時は大都金物という社名でした。



そして今はDIY・工具領域のEコマースのプラットフォームをしています。創業の頃からお付き合いいただいていたメーカーさんに我々のプラットフォームに乗っていただいて、商品データを登録すると、Amazonだとか楽天だとかYahoo!だとか、そういうところに商品が掲載されて、あと「トラノテ」という、「ポストモノタロウ」と位置付けている我々のサイトに、商品が掲載されます。
 
大都 代表取締役
山田 岳人 氏

 大学卒業後、リクルートに入社。6年間の人材採用の営業を経て、創業1937年の総合金物工具卸売業「大都」に入社。入社5年後の2002年にEC事業を立ち上げる。2011年、代表取締役に就任。B2B(事業者向け)通販サイト「トラノテ」では建設業など現場で必要な工具や消耗品を400万点以上販売。B2C(モール出店)では工具や塗料などDIY用品の日本最大級のECサイト「DIY FACTORY」を運営。楽天市場のDIYジャンルで4年連続で日本一のアワードを授賞。日本の住まいを自由にすべく、取引先とのデータ連携システムを自社開発し工具業界のサプライチェーンプラットフォームを構築。

社員は30人で、加えてベトナムのホーチミンに開発子会社を持っていて、30人近いエンジニアがいます。属性としては社員の半分が外国人、男女半々、エンジニアが半分というチームで、売上は昨年は70数億円、今期100億円近くまではいくと思っています。

越智  タビオの越智と申します。私が社長になって約16年。2年ほど前に当時の会長が他界し、そこからは私がトップを務めています。1968年が創業で、売上高は162億円、国内店舗数は239店舗、ロンドン、パリでも約20年商売をしています。

最近は中国や韓国にも出店しています。ブランドとしては「靴下屋」というお店が一番多く、ほかに「Tabio」というブランドがあります。大阪では、ルクアが「靴下屋」、グランフロントが「Tabio」(現在は「靴下屋UPDATE」)で、少し客層が違うところを攻めています。あとは、梅田のTabioのメンズ店。そもそも「靴下屋」って1店舗どれくらい売れるのか。年間6500万円くらい売れないと出店しません。GINZA SIXで2億5000万円くらいです。最近ではタビオスポーツが、ヨーロッパでも知名度が上がってきています。
 
タビオ 代表取締役社長
越智 勝寛 氏

 1994年ハウスオブローゼに入社。1997年 ダン(現タビオ)に入社、2003年商品本部長就任、翌年 取締役就任、その後 取締役第一営業本部長を経て、2008年 代表取締役社長に就任。現在に至る。「熱愛」「顧客中心」「不易流行」「和」の経営理念の下、ものづくり・お店づくり・人づくりに決して妥協せず、協力工場の皆様やフランチャイズの皆様と強いパートナーシップを築き上げ、お客様にとって最高のものづくりとお店づくりを目指している。
 

ーー 以上が、お二人のご紹介でした。ところで皆さんは「クリエイティブ・ジャンプ」という言葉を聞いたことがありますか。当日会場で手をあげていただくと、1割いませんでした。何を隠そう、我々3人とも初めて聞いた言葉で、私もクリエイティブ・ジャンプについてアジェンダノートに寄稿依頼があって初めて検索しました。

 そうすると、いくつか、人によって解釈が違うんですが、私が書けるとしたらこれかなというのが、思考のジャンプというものでした。
 
近鉄都ホテルズ/取締役 ホテル運営本部 副本部長(※セッション時は東京エリア統括兼シェラトン都ホテル東京 総支配人)
能川 一太 氏

 近畿日本鉄道で、駅や美術館などの設計、建築、観光プロモーション、レジャー事業を担当。志摩スペイン村テーマパーク支配人、シェラトン都ホテル東京総支配人を経て、現在は国内のホテル事業全般を担当。

 10年くらい前に志摩スペイン村で支配人をしていました。テーマパークというのは皆さん、パレードを見たいとか、キャラクターと遊びたいとか、アトラクション、ジェットコースターを楽しみたいという気持ちで来られるので、なかなか「三重県まで行ってフラメンコショーを見たい」という方がいらっしゃらない。だけど毎年、バルセロナとマドリードでオーディションをして、プロのダンサーを招聘している、すごくいいものなので、ぜひ見てほしい。

 どうやったら見てもらえるか、事務所で一生懸命考えるんですが、なかなかアイディアが出てこない。そうして行き詰まった時、一歩外に出るとそこはテーマパークなので、気分を変えて歩いていると、わかる方にはわかると思うんですけど、お客様のちょっとした仕草、一挙手一投足であるとか、あるいはスタッフとの雑談で、悩んでいた答えがスッと降りてくる瞬間が何回かありました。それが私にとっての「クリエイティブ・ジャンプ」です、という文脈で書かせていただきました。ということで、今回のセッションでもお二人にとってのクリエイティブ・ジャンプについて伺いました。

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