関西発・地方創生とマーケティング #05

「マーケティングは市場起点、ブランディングは自分起点」中川政七商店13代目に聞くマーケティング

前回の記事:
鉄道会社のマーケティングに必要なことは、地方創生である【近畿日本鉄道 能川一太】

中川政七会長に代わり、売上は4億円から52億円

 奈良で300年以上続く老舗企業、中川政七商店十三代 中川政七会長に、地方創生とマーケティングをテーマに、1時間以上にわたり、温かみのある奈良の本社で様々なお話を伺いました。2回に分けて、お届けしたいと思います。



 中川政七商店は、1716年に手績み手織りの麻織物で創業しました。現在は「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げて、幅広く生活雑貨を扱い、全国に直営店を展開しています。会長である、中川さんが経営を担うようになって、店舗数は3店舗から51店舗に、売上は4億円から52億円と、それぞれ10倍以上になりました。

 メディアにも度々ご登場され、NHK Eテレの人気番組「SWITCHインタビュー 達人達」で星野リゾートの星野佳路代表との対談などをご覧になった方も多いでしょう。

 今回のご縁は、同じく奈良で300年以上続く、そうめんの製造販売を行う三輪山本の山本太治社長の紹介なのですが、両社に共通しているのは、ブランディングを大切にされているという点です。

 中川政七商店は、くまモンのキャラクターデザインで有名なクリエイティブディレクターの水野学さん、三輪山本はユニクロのロゴデザインなどをされた佐藤可士和さんが、それぞれブランディングを担当されています。

 今回、お話を伺っていて感じたのは、当たり前ですが、ビジネスや地域に対する視点が他の方と比べて違うということ。さて、今回は主にマーケティングについてお届けします。
 

地方創生とは、地方のブランディング


 
 中川さんに冒頭で、地方創生とブランディングをテーマにお聞きしたい旨を伝えると、「そもそも地方という言葉に実体はなく、ある場所を括っただけに過ぎず、創生とはひとつひとつのコンテンツをどれだけ魅力的にするかということの総和でしかない。つまり、一社一社のブランド価値が上がり、そうした企業が増えれば、人はわざわざその地方に足を運び、結果として元気になるということ」と、お話しされました。


 そして、「コミュニケーション、すなわち伝えることだけに集中しすぎで、魅力的なコンテンツが無いのにも関わらず、さも魅力的なもののように伝えてもダメ。例えば、自然という存在は日本中どこにでもあるにも関わらず、『自然が豊かです!』と言っても全く意味がない。これはブランディングというものを理解していないということ」だと語ります。

 
 では、地方の魅力をどのように伝えて行けば、よいのでしょうか。そこで、まずはブランディングについて伺いました。

 中川さんのブランディングの定義は、「伝えるべきことを整理して、正しく伝えること」になります。

 そして、「大事なのは、人の心に響くものをしっかりコミュニケーションできるのかということ。ブランドは、頭の中につくられるものということを理解しなければならない。その磨き方によっては、良くなる可能性があるし、逆にそうならない可能性もある。やり方次第だ」と言います。

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